勘解由小路の屈辱

1/1
前へ
/35ページ
次へ

勘解由小路の屈辱

引き立てられた先で、カタカタと動くロシア兵と高官達に、勘解由小路降魔日本国防衛大臣は囲まれていた。 連中が、ショボい牢なんかに俺を入れたら、ピロシキでも買いに行こうかな。などと考えていた。 「冥王ハデスに告げる。貴方にピッタリな牢獄を手配するのに随分骨が折れました。服を脱げ。(マカーキ)」 三田村さん。服を脱がせてくれと言いかけて、いないことに気付いた。 「お前の(しもべ)は今はいない。無理矢理剥いでやろう。やれ」 力ずくで肌を晒された。 こいつ等寿命1時間くらいか。勘解由小路は思った。 だが、すぐに代わりが来ることになるだろう。 「情けないザマね?ハデス」 高官なんだかチェルノボーグなんだか判然としなかった。 「なあ。とりあえず、俺を一般の捕虜じゃなくて、日本の政府高官扱いにしろよ。ああお前はあと半日の命だ。ショイーグって、しょうもない国防相殺ったな?お前」 「無尽蔵に湧く人形みたいなものよ?おい」 バチん。と、肉に異物が埋め込まれる苦痛があった。 「ハデス封じか。まあ痛いんだがな?あんまり俺を雑に扱うなよ?この手の暴力に晒されたことはないんだが」 更に、右手首が切り落とされた。 「半身が役立たずのお前にピッタリだ!さっさとこの愚劣な(マカーキ)を収監しろ!すぐに銃殺刑にしてやる!」 殴り倒され、床を引きずられ、不潔な牢獄に蹴り込まれた。 「1日1度の食事だ。大ロシアに逆らったゴミは、床に口を擦り付けるがいい!」 粗末な食事が、薄汚れた床にぶちまけられた。 カタカタ言いながら、高官は去っていった。 キノコビッシリのほとんど外みたいな牢だな。 右手か。何故か復活しないんだ。 興味深いな。チェルノボーグの奴、俺を封じる方法を編み出したんだな。 それから数年後、総理になった勘解由小路夫妻を、マルスが襲撃した際、マルスが使用した殺神石(さっしんせき)は、この体内埋め込み式の器物を改良したものと思われた。 埋め込んだ楔の中には、あの馬鹿の臭い胞子が入ってたんだな。 久しぶりに、完全な人間に戻っちまったなあ。楔が神経組織を刺激してるから、全身痛いし血が止まらんし。ん? カタカタした医者が入ってきて、雑に右手首の傷を焼いていった。 まあ、このレベルで痛め付けられるのは生まれて初めてだなあ。 ちょっと楽しくなってきた。 拷問に等しい肉体の傷も、勘解由小路にとってはまるで小事だった。 牢の外には無数のロシア人。まるっきりロシア革命の時のニコライ2世みたいだな。 敵国認定しただけのおっさんをレイプするのか?このラジコン人間共は。 そして、出てきた黒髪の女が、勘解由小路に言った。 「お待たせ。ヴィクトル・アレキサンドルイチ」 立っていたのは、本性を現したチェルノボーグだった。 「おう。俺に面会か?アクーリナ」 とりあえず乗ってみたんだが。 「まあ、私は、例の女神だけど、同時に別の神に下げ渡された女よ?ねえ?綺麗でしょ?ヴィクトル・アレキサンドルイチ?」 まだ出オチ引きずるのか。寒い奴だな。 「改めて言う。今のお前はただの人間。その状態で、神に敵うと思う?」 チェルノボーグから無数に伸びた触手が、勘解由小路を絡めとっていった。 確かにな。今の俺じゃ逆立ちしても勝てんな。 二段構えのハデス封じ。前の消耗戦の続きか。出来れば、もうピアスは外せんし、俺に埋め込まれたハデス封じが生きていることだけが救いか。 ハデスの寿命ももうないんだが。 頼むぞ。正男にマコマコ。子供達。 ああ。あとあいつ等がいるか。そろそろ帰ってくるだろう。火星から。 勘解由小路降魔は、チェルノボーグに飲まれて消えた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加