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勘解由小路の屈辱
引き立てられた先で、カタカタと動くロシア兵と高官達に、勘解由小路降魔日本国防衛大臣は囲まれていた。
連中が、ショボい牢なんかに俺を入れたら、ピロシキでも買いに行こうかな。などと考えていた。
「冥王ハデスに告げる。貴方にピッタリな牢獄を手配するのに随分骨が折れました。服を脱げ。猿」
三田村さん。服を脱がせてくれと言いかけて、いないことに気付いた。
「お前の僕は今はいない。無理矢理剥いでやろう。やれ」
力ずくで肌を晒された。
こいつ等寿命1時間くらいか。勘解由小路は思った。
だが、すぐに代わりが来ることになるだろう。
「情けないザマね?ハデス」
高官なんだかチェルノボーグなんだか判然としなかった。
「なあ。とりあえず、俺を一般の捕虜じゃなくて、日本の政府高官扱いにしろよ。ああお前はあと半日の命だ。ショイーグって、しょうもない国防相殺ったな?お前」
「無尽蔵に湧く人形みたいなものよ?おい」
バチん。と、肉に異物が埋め込まれる苦痛があった。
「ハデス封じか。まあ痛いんだがな?あんまり俺を雑に扱うなよ?この手の暴力に晒されたことはないんだが」
更に、右手首が切り落とされた。
「半身が役立たずのお前にピッタリだ!さっさとこの愚劣な猿を収監しろ!すぐに銃殺刑にしてやる!」
殴り倒され、床を引きずられ、不潔な牢獄に蹴り込まれた。
「1日1度の食事だ。大ロシアに逆らったゴミは、床に口を擦り付けるがいい!」
粗末な食事が、薄汚れた床にぶちまけられた。
カタカタ言いながら、高官は去っていった。
キノコビッシリのほとんど外みたいな牢だな。
右手か。何故か復活しないんだ。
興味深いな。チェルノボーグの奴、俺を封じる方法を編み出したんだな。
それから数年後、総理になった勘解由小路夫妻を、マルスが襲撃した際、マルスが使用した殺神石は、この体内埋め込み式の器物を改良したものと思われた。
埋め込んだ楔の中には、あの馬鹿の臭い胞子が入ってたんだな。
久しぶりに、完全な人間に戻っちまったなあ。楔が神経組織を刺激してるから、全身痛いし血が止まらんし。ん?
カタカタした医者が入ってきて、雑に右手首の傷を焼いていった。
まあ、このレベルで痛め付けられるのは生まれて初めてだなあ。
ちょっと楽しくなってきた。
拷問に等しい肉体の傷も、勘解由小路にとってはまるで小事だった。
牢の外には無数のロシア人。まるっきりロシア革命の時のニコライ2世みたいだな。
敵国認定しただけのおっさんをレイプするのか?このラジコン人間共は。
そして、出てきた黒髪の女が、勘解由小路に言った。
「お待たせ。ヴィクトル・アレキサンドルイチ」
立っていたのは、本性を現したチェルノボーグだった。
「おう。俺に面会か?アクーリナ」
とりあえず乗ってみたんだが。
「まあ、私は、例の女神だけど、同時に別の神に下げ渡された女よ?ねえ?綺麗でしょ?ヴィクトル・アレキサンドルイチ?」
まだ出オチ引きずるのか。寒い奴だな。
「改めて言う。今のお前はただの人間。その状態で、神に敵うと思う?」
チェルノボーグから無数に伸びた触手が、勘解由小路を絡めとっていった。
確かにな。今の俺じゃ逆立ちしても勝てんな。
二段構えのハデス封じ。前の消耗戦の続きか。出来れば、もうピアスは外せんし、俺に埋め込まれたハデス封じが生きていることだけが救いか。
ハデスの寿命ももうないんだが。
頼むぞ。正男にマコマコ。子供達。
ああ。あとあいつ等がいるか。そろそろ帰ってくるだろう。火星から。
勘解由小路降魔は、チェルノボーグに飲まれて消えた。
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