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勘解由小路王国樹立
ふーん。真っ暗な闇の中で、ベロボーグと勘解由小路は、格子越しに向かい合っていた。
「チェルノボーグがいるなら、当然お前もいると思ってたぞ。仲良くしような?ベロボーグ」
「ううぇーい」
ベロボーグ様は、ただのクソ酔っ払いだった。
「それから、あん?」
闇の中で、何人もの影が、勘解由小路に平服していた。
「さっき酒盗ってったのは、お前だな?キキーモラ」
キキーモラは、スラブ地方の妖精だった。
「んだ。私はバーチャル越中の国民が1人、おタネというだよ。お奉行様が仕える猊下さ万歳」
万歳、万歳っつっていた。 他の国民も。
バーチャル越中というのは、最近ヘイデンがやっていたSNSのチャンネルで、キキーモラは、あんまり多くないフォロワーの1人だった。
「ああ、まあいいや。とりあえず、ボルシチ食わせてくれ。それからな、誰か灯りをくれ。この牢を軽くリノベーションしよう」
ベロボーグはベロベロになっていて、鼾をかいていた。
数時間後、チェルノボーグが様子を見に行くと、モスクワ辺りの超高級ホテルにありそうなベッドと、ソファーにふんぞり返った勘解由小路が、揚げピロシキをハムハムしていた。
手を使わず、食い方が何だか鳥めいていた。
鬼火ランタンが1つぶら下がっていて、結構快適なプリズンライフだった。
「おう。また袋叩きタイムか?いいぞ。好きにしろよ」
この馬鹿目にもの見せてやる。
下手な暴力では、この馬鹿には効果がない。
既に、私の胞子が入った楔が、こいつの神経を侵食し、発狂もかくやと言う苦痛を常に与え続けているはずだ。
チェルノボーグはスカートを翻し、憎悪に満ちた目を、虚空に向けていた。
何かが私に告げている。
敵に、いかんともしがたい苦痛を与える方法を。
人間に戻したって、健常な右手を切り落としても、私の中に飲んでも、こいつには意味がなかった。
戻した時、だからどうした?って顔をしていた。
ベロボーグですら、3回ほどで抵抗の意思を失い、ただの年寄りとなった。
ハッキリしている。本人がしつこいほど言っている。
心から愛しているという、お前の妻を殺し、死体を足元に転がしたら、どんな顔を見せるのかしら?
チェルノボーグは、指先を伸ばし、そこから生まれた眷属達に告げた。
「今から、ハデスの妻のプロセルピナと、その身近な者達を殺し、死体を持ってきなさい」
プロセルピナ。その言葉を口にした時、思わず唇が腐って落ちそうになった。
私のハデスが愛する女は、絶対に、絶対に許さない。殺す。殺してやる。
その憎悪がどこから来るのか解らないま、チェルノボーグは、勘解由小路真琴の抹殺を強く強く決意していた。
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