引っ張り込まれなかった

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引っ張り込まれなかった

待望の、第3子を出産し、母子ともに健康でこのほど退院した、霊防省長官夫人の島原志保が、3女の美帆(みほ)を伴ってリビングに降りると、夫の島原雪次が、空中をパリパリと放電しながら、新聞記事とタブレットを閲覧していた。 「おはよう。カーペット気を付けてね?雪次君」 「ああ済まない志保。美帆もおはよう」 結局、第3子の娘の名前は美帆になってしまった。 勘解由小路と、娘の莉里の、嫌な予言が現実になってしまった。 あの子が、美帆ちゃんの誕生楽しみなのよさ。などとボソッと言った所為で、父親の馬鹿がおう。美帆坊はどうした?未來の軍神の為に空母を町に改造する予算案を出さんとな。とか言っていて。 絶対に名前は美帆にしない。そう断言したのだが、いざ生まれるとああ美帆。ママよ。などと志保が呼んだ為、俺の可愛い末娘は美帆になってしまった。 「済まない志保。すぐに行かなければ。朝食は1人で済ませた」 テーブルの上に、トースターと白皿が置かれていた。 「そうね。勘解由小路さんは大変みたいね」 まさか、直接的な暴力と最も遠いところにいると思っていた、勘解由小路が寄ってたかってロシア人に殴られ蹴られ、右手を、唯一健常な右手を切断されて、牢に引きずられていく映像が公開され、日本は上を下への大騒ぎになってしまった。 人化オーガを中心に、一気に世論は開戦ムードに傾いてしまっている。 仮にも、一国の大臣クラスの人間に暴行を加えるなど、正気とは思えない。 黒神チェルノボーグ、霊災認定、ならば、日本はガンダマール以下の対霊災兵器を派兵しなければならないのだが、それにゴーサインを出す防衛大臣も、防衛副大臣も今はいない。 何とかしなければ。その為に、俺は日本に置き去りにされたのだろう。 このままにしてなるものか。もうこの国には、神の専横を許す余裕はないのだ。 ニュクスのような神は、2度とごめんだ。 眠っていた美帆の額にキスをして、島原は出ていこうとしたら、問答無用で唇を奪われた。 何だろう、志保の若々しさは何だ? 40をすぎたにも関わらず、未だ、出会った頃のままであるかのようだ。 志保も、美帆も俺が必ず守る。 美帆の姉の真帆と夏帆。真帆は勘解由小路流紫降の変態に奪われ、夏帆は、(ベリル)にベッタリだった。 もう美帆だけしか残っていないけれど、それでも、俺は日本国霊防省長官だ。 パリパリと空中放電しながら、島原は家を出ていった。
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