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「道、分かる?前、走る?」
自転車に掛けたワイヤーキーを外しながら聞かれて
「道は分かりますけど前…」
「もっかい言ってみ?」
「道は分かるけど?」
「うん、正解」
「前は藤原…冬馬が走って…」
「フルネームの呼び捨ては斬新」
「…馬鹿にされてる」
「してない、してない。努力を微笑ましく見守ってる」
「絶対違うし。冬馬の髪に花びらがついてるけど教えてあげないんだから」
「…美姫さん…天然入ってる?いま思い切り教えてくれたよね?」
「………天然じゃない…」
「すごい間が空いた、くっくっ…」
「…親切な本質が私の意地悪を飛び越えて音になっただけ」
「くぅ~っ…」
お腹を抱えて自転車の隣にしゃがみこんだ冬馬に
「じゃあ、ありがとうございました。お先に失礼します」
と自分の自転車を押すと、ガシッとタイヤを掴まれた。
「俺が前だろ?」
「冬馬、お腹痛そうなんで…お先に失礼しようかと」
「親切な本質の美姫は腹痛の奴を置き去りに出来るんだ」
「笑い過ぎてお腹をひくひくさせてる人は元気だから置き去り決定」
「花びら、取って」
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