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第二話 重鎮たち
二月、短い日々にやることは多くて、本当に逃げ月だというのを改めて感じた。
俺たちにとっては進路も決めなくてはいけなくなるのだ。
「よっしゃ、健こっちはいいぞ」
「こっちもだ」
「先輩、これは?」
「ああ、これはこっちだな」
三年生は、受験も終わり、あとは卒業まで、単位のたりない人以外は休みとなっている、俺たち生徒会は、最後の事を教わるべく、一年と二年の精鋭部隊総出で今総ざらいをしているところだ。
健は、卒業式に送辞を読み上げることが決定してるし、俺たちはその分、次の入学式のことで動き出しているんだ。
「クラス替えはこれでいいんだな、一年、何もなきゃ学園長に出すけど漏れはないよな」
「はい、お願いします、千弘先輩、エスピーの部屋の方は?」
「オー、確認行ってくる、手の空いた人いる?」
俺も行く。
一年の金子君と西田と書類とマニュアルをもって、スマホで確認を取りながら、地下駐車場へ向かった。
「今年もありますかね」
「一回はあるよ、訓練しないといけないからね」
「でもあの雰囲気は嫌ですね」
「俺たちだってそうだ、わかっていてもいざというとき、人の誘導なんてむつかしいところがあるからな」
「パニックだからな、土田さん遅くなりました」
「いいえ、時間通りです」
「竹本、どうだ、出来そうか?」
「はい、月一回のチェック完璧です」
「これが、来年度のリストになります、人員顔合わせは入学式当日となりますがお願いいたします」
「ン?千弘さま、亮さまも抜けるんですか?」
「うん、俺たちは、外で動くことが増えるから、そこは弟たちに任せることにしたんだ」
「魅録様のようですね」
「それでも守らなきゃいけないものではあるからね、頼んだよ」
「はい」
「何か問題は?」
今のところないという、チェック項目はまだある、五人で、そこをぐるりと見て回った。
三月十日最後の予行練習、卒業式は十五日ね。その日、一年生の顔見せがある。そして四月になれば生徒会会長として、健が立候補することになる。
裏生徒会の話もさせてもらい、まだいる三年生からOKをいただいた。
それと大事な話、明後日、あの重鎮たちと会う、場所は。
「ほう、さすがだな」
別にホテルじゃなくてもいいと聞いていたけど一流ならと言うことで俺たち四人で決めた。
「たまたまですよ、みんな忙しいんで」
「いいんじゃないか?後で、報告してくれればいいし」
わかってますよと口を突き出した健、笑っている三年生、三人がいた。
もうこの三人ともお別れだ。
MOホテル、東京三越に近いこのホテルなら文句は言わないだろうと個室を抑えていた。
ドキドキするな。
大人たちは時間で勝手に来てくれるというところだが、俺たちはそれぞれ仕事もあるということで、オープンスペースではあるが、ラウンジで待ち合わせ。
「人が多いな」
「いいんじゃないか?こういうところもたまには」
ピロン
「ン?ハ~、これ見ろ」
そこには、俺とリン。
ピースサインでとあるところで写真を撮った。
「行こうか?」
「行こうってどこへですか?」
「芸能人、騒がれて困るからこっちに呼ばれたってさ」
一年生を引き連れ、健と豊田がやってきた。
「なんだよ、ケーキかよ」
「いいじゃん、まだ時間あるんだし、すみません、コーヒー五つ」
一年生は緊張してる。
「来年はお前らが仕切るんだからな、頼むぜ」
「そうやってあおる、私たちに同じことをしろと言われても、それ相応のことしかできませんわ」
「まあ、まあ、いつもなら、クリスマスの時に頼むホテルがメインなんだけどね、今回はどうしてもって言われてね」
「そう言われれば、あの時のシェフ、ここの総料理長に就任なさったんですよね」
さすが鈴木財閥、それと、俺と亮がどうしても、ここじゃないと困ることがあったんだ。
「仕事大変ですね」
「なんたって、小国ではあるが王様とだしね、国関係で何かしたら大変だし」
そういうことですかと三人はわかってくれた。
それと、今日お招きしたのは七人だそうだ。
「え?初耳」
「何かあったの?」
「それは、重鎮たちから聞こう、俺はそう言われただけだから」
「そうか」
「恐れ入ります、そろそろお時間と伺っておりますが」
「さて、それではまいりましょうかね、諸君」
そういって立ち上がった健の後を俺たちは胸を張って出ていったんだ。
前財務次官、兵頭幸之助様。右側より、前検察庁長官神野栄一様そのお隣、玄翁流会会長、花柳美春様
左より真流会会長馬場洋一様お隣、BIT工業会長篠田栄様
総銀会長、六道千一様
華僑副理事、周録州様、以上です。
そうそうたるメンバー、それに圧倒される。
「足を崩してください、一年生諸君、ようこそ我が星周学園へ、きみたち三人は、これからこの国を引っ張る大事な精鋭部隊です、この国が揺らいだ時、一番に守られる存在、そう思ってほしい」
俺らたちと同じ文句で始まったが、ここにはいま日本のトップと呼ばれる人たちが勢ぞろいしているんだ。
ただ、俺たちの時のように、煽り立てることはなかった。それは、俺たちに比べたら、静かにまだ三人とも動いていないと言ったほうがいいからなのかもしれない。
パンパンと手を叩き、料理が並び始める、無国籍料理とは聞いていたがフレンチが基本だと言っておられた、オードブルだけでも温かいものが出てきて、なんかやられたって感じだった。大人にはシャンパン、俺たちにはスパークリングワインが注がれた。
「では、これからの、星周学園の発展を願い、乾杯」
「乾杯!」
二度目、それに何度かお会いしているから過緊張はさほどなかった。
料理も、うならせるほどうまいものが出た。
話は料理のことばかりで、こんな時もあるんだなと言う豊田、気は抜けないぞと話しておいた。
「いやー、これほどとは」
手をあげられた、何が起きるのかドキドキ。
すっとドアが開いては入ってこられたのは、シェフ。
大人たちは美辞麗句を並べ称賛、俺たちも満足で、親指をあげると笑っておられた。
さて最後のデザートもすみ、お茶が出てきた。
本題だろうな。
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