第二話 重鎮たち

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「さて、去年も二年生、いや上級生たちは忙しそうで何より」 「本当に我々までも動かされるとは、いやはや」 「そこは素直に、お礼を言ってもいいのでしょうか?」 「おや?そうは思わないというのかね?」 食いついてきたな。 「いいえ、ここはありがとうございましたと素直に頭を下げさせていただきます」 俺たち四人は頭を下げた。 「まあ、この間のこともあるし、日本はもうどの国からも相手にされないだろうな」 「ですが、この国にいる限り、見捨てるというのは簡単にできることではありませんからね」 「まあ学者連中には、早いうちから外国へ出ることは進めているが」 ン?そういう風に仕向けているということか。 「海外情勢をどう分析するかね、豊田君」 お、きたな。 「そうですね、テロと呼ばれるものに関しては沈静化を見せていますが、アメリカサイドでどうにでもなるでしょうね、あの大統領について行けば、昔のお金で動かせたアメリカに戻るわけですからね、その点中国は我が道を行くで、どの国がどうなろと、自国が一番であればいいわけですから、ついていく国は多くなるでしょうね」 痛いところをついてくるな。 「ソビエトは、もうお金で動かせるほどの魅力はないですし、中国もいかがなもんでしょうな?」 本土はいい事がない、日本企業は、撤退するばかり、まだ、台湾や上海中心に何とかやっていけてはいるが、押さえつけの国家は、何も生むことはないでしょうしね。ただ怖いものはありますけどね。 怖いものか、それはさて、話は変わるが木村君はおじいさまの仕事をするようになってだいぶ目が肥えたようだ、私たち華僑のものも、日本独自のものとなりつつある、子供たちは日本で生まれ教育を受けたからね、自国に戻るのは怖いところがある。それをどう見るかと聞かれた。 「そうかもしれませんね。海沿いと北京を結ぶところだけが発展して取り残されているところは暴徒化している、それを国が抑えるにしても金が動かなくて意味がないわけですから、昔のように、物と現金が今は通用しませんからね、わいろなんていうものもこれからどうなっていくことか」 「ははは、QRコード、チップでの決算はわいろとしての価値がなくなるのかもしれないな?」 「そうですね、日本もそうなるのは見えています、キャッシュレスは管理することはできても、日本人はため込むのが好きですからね、すぐ裏金としてそのものを残したくなってしまう、政治家にとってはいいものではありませんからね」 「林君、長谷川君、どう思うかい?」 「政治家が臭い物に蓋をすると言うより、腐っているものが上に覆いかぶさって、国民はもうそれを受け取るしかないんですからね、あと十年、この国は、どんどん人がいなくなるんです、それをわかってまだ箱モノを作ろうとするバカげた地方自治体を野放しにしてるんですからどうにもなりませんよ」 「このままじゃ、どこかの国の植民地になってしまうんだろうな、中国でさえ、まだ台湾ともめてるんだ、ばかげてる」 「俺もそれは思う、農業が衰退しているからな、食料が入ってこなくなると、アメリカや中国の傘下になれればいいが、ソ連に捨てられたら、この国はどこからも見捨てられるのは目に見えている」 それに躍起になっているのが韓国だ、いま日本を押さえておけば、あの国は独立することはない、だから日本企業を逆手にとって自国民の有利になるように感情を煽り立てている、市民は、ただそれに面白く乗っかっているだけさ、それに乗らないと、自分の首を絞めるようになっている国だからね、個々自信は結構冷静に見ているよ。 インドもな、カースト制度みたいのがまだ根強く残っているからね、それさえなければ、もっと頭のいい人たちが力をつけられるのに、それを抑えつける傾向にあるからな。 「今は、どの国もアメリカの動向を探っているからな」 「イギリスも、どうなんですかね」 「俺はあそこはこのままじゃ自滅すると思うな」 「俺も」 「俺もそう思う」 健も手をあげた。 「ほう、なぜそう思う?」 「英語圏だから多くの企業があの国に流れ込んだ、それが独立したらどうなるかはみんなが知っていて反対した、だがそれをまたしても変な知恵を持った議員と言う権力者たちが自分の地位のためだけに反対している、国が傾こうかどうなんかは次の問題さ、それで食っていけなくなっても、議員たちは国から逃げればいいだけだからな」 「それはきびいしな」 「イタリアとは違いますよ、あそこは今自分の国自体が危ないから決断したんだ」 「どういうことだね?」 あの国は、学者の声を聴いているんだと思う、この先、地球規模で起きる異常気象は歯止めが聞かない、フィレンツェはもう、海に沈むとまで言われているんだ、だから、国民を守るため独立した、大規模な災害が起きても、自分の国だけなら解決できる可能性もありますからね、加盟国だと動けないことが多すぎます。 「一年の三人は先輩の話を聞いてどう思う?鈴木君」 「すごいです、なんか、夢のような話で、現実なのかがわからないところがあります」 「竹花さんはどう思う?私ら、文化の面から見たら、関係ないような話に聞こえるかい?」 「いいえ、我々にも、子供たちの問題はついて回るでしょう、今特に目に見えているのは歌舞伎の世界でしょうね、子供が伝承するトップスターだけではないのだということをちゃんと親が教えてこなかった結果、裏方や、音楽奏者たちがいなくなっているのは明白ですから、文化面でも、この先は危ういでしょうね」 「金子君はどうだい?」 「建設業界は、今や、この国では同仕様のないことになっています、ほとんど出来上がっているわけですから、それを維持していく時期になっているのに、新しいものをそれでも作れという矛盾した方向へ流れています」 「だから君の会社は大手ゼネコンと言われながら海外流出したのかね」 「曽祖父は、家を建てるとき、数百年後も人がすめるものを作りたいと言っていましたが、戦争のあの焼け野原の東京を見て、なんと無様な掘立小屋を作ってきたのかと嘆いたそうです。それからは頑丈な建物を作り続けています、ただ今は日本にそれは必要ないということでしょうか」 「どうしてだい?」 「空き地ができれば、その土地に、人がすむわけでもないのにマンションと称して次々ビルが建っている、でも使いこなせているのでしょうか、空き家となったビルは、先ほどの地球規模での災害には凶器となってしまう、解体業も合わせてやっていかなければ、この国は成り立たない、本当にあと十年後、この高いビル群が必要とされない時が来るんだということを、建設業界は見ていかなければいけない時期にきているのだと考えます」 「すごいな、俺ももっと勉強しないと」 「そうですよ、あなた方の下には、何万と言う人がいるんです、中学の時とは違いますからね」 「はい、頑張ります」 「その返事を聞いて安心いたしました」 出るかな? 「ですが一年の諸君、君たちが今までしてきた物はここまでです。これからは社会に通じる人間でなければならない、そのため今君たちがしてきた子とは趣味程度にとどめていただきたい」 やはり同じだ、ただ切り口が違ったからか、彼らは案外素直にはいと返事をしたんだ。やっぱり、俺がいたせいだろうか?そう思ったら、三人には申し訳なく思ってしまった。 「さて、この後の予定はどうなっているかな」 ン?なんだ?
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