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たっぶり時間をかけ、たっぷり歩いて回った。時刻は12時を回っている。昼時だ。
「菜名ちゃん、そばがいいって言ってたでしょ？」
運転席に乗り込んだK子さんが言う。車はまだ駐車場に停まったままだ。
そう、私の昼食リクエストはそば。箱根といえばそば。山は水がきれいで美味しいから、そばも美味しくなるというのは、食いしんぼう界ではよく知られていることである。
せっかく海沿いの街に来たのなら、ここで海鮮を選ぶもありなのだろう。ところが私はなんと、生ものの魚が食べられない。アレルギーなのだ。
火を通せば問題ないので、例えばカキフライなんかは大歓迎なのだけれど。
「箱根で有名なところ調べたんだ」
K子さんはスマホを操作しながら言う。
「はつ花って言うんだけど」
「あ、私もそれ見ました！」
湯本にある老舗のそば屋とのこと。美味しくないわけがない。食べたことないけど。
「駐車場があるかどうかだけ……」
はつ花には、本店と支店があるらしい(銀行みたいな言い方になってしまった)。
で、支店は車を停める場所が近くにないが、本店は専用の駐車場があるらしい。台数は少ないが。
「じゃあ、ここ行ってみようか」
「行きましょ行きましょ」
レッツラゴーと、車は神社の駐車場を後にした。
気のせいかと思ったが、気のせいではなさそうだ。
車が徐々に増えている。
平日なのにこの混みようとは、これいかに。
「いや、むしろ平日に来れるなら、混雑を避けようって人が多いのかもしれませんね」
「そうかもねえ」
「ま、私がそうですし」
なんて、他愛のない会話をしつつ、車を走らせていく。
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