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ふるさとを見つけた段階で、母にはこんなホテルがあるよ、とは話していた。
しかし、実は祖母には何も言わずに、取っている。
「一応、聞いてみた方がいいかな? でも、モタモタしている間に取られちゃうのもまずいよね」
メールもしない祖母だから、手段が電話しかない。
しかも、向こうもこちらも仕事があって、時間も曜日もバラバラと来たものだから、タイミングを伺うのも、難しいのだ。
「いいんじゃない、何だっていいって言うよ」
母がケロッと返した。
「大丈夫だよ、取っちゃいなよ」
というわけで、取ったのだ。
後日、祖母に電話をして、旅行のことを話した。
「ホテルね、温泉があって、和室のところ取ったから」
「うんうん」
「ご飯はバイキングなんだって。みんな、それぞれ好きなの食べよう」
「うんうん、いいね」
「ビールも飲んでゆっくりしよう」
「うんうん」
「当日は、私が車で迎えに行くから」
「あらそう、菜名ちゃん運転してくれるの?」
「うん、その方が楽だなと思って」
「ありがとう、よろしくお願いします」
「家に行くの、だいたい10時くらいかな? 大丈夫」
「大丈夫よ、私はもう朝から起きてるから」
「出る前に、一応電話するよ」
「はいはい」
「ところで、箱根でどこか行きたいところ、ある?」
「いやあ、私は詳しくないから。全部、菜名ちゃんに任せるよ」
「あ……そうですか」
我が母こと、娘の言うことが当たったわけだ。
「じゃあ、考えておくよ」
「楽しみにしてるよ、ありがとね、よろしくね」
一任してもらえるなら、それもそれでこちらとしては、やりやすい。
祖母に関しては、私より母の方がよくわかっている。母に確認を取りつつ、ざっと行程を考えた。
「箱根神社の階段、登れるかな?」
「どれくらいなの?」
母に尋ねられて、ないに等しい記憶を必死に呼び起こす。
「ええ……どれくらいかな、駅の階段よりは少し長いくらい?」
「江の島ほどじゃない?」
「あ、そんなではない」
「じゃあ、行けるかな……私が」
「そっち?」
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