母娘3人、箱根旅→´23.05.24~25

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 迎えた当日。  気持ちのよい五月晴れ。  手間になって申し訳ないが、母にはいったん私の家まで来てもらうことにした。  というのも、私と祖母の家が、中央道にとても近いのである。  実家の方が西寄りではあるのだが、いかんせん高速道路へのアクセスが悪い。  私の家から行く方が、所要時間は少なくて済むと思うのだ。  そんなわけで、荷物を引きずって母がやってきたのが、9時過ぎ。 「……頑張った」  昨日も、パートで夜勤をしていたと言う。  夜勤と言っても、深夜ではない。  それでも夜遅く帰宅し、家のことや明日の準備やらに追われれば、疲れもたまる。  ちなみに、私と祖母も前日は仕事であった。  この旅行が終わったら、次の日は3人ともまた仕事だ。  人生、こんなもんである。 「ねえ、菜名ちゃん」 と母が言った。 「スピッツ聴いた?」 「いや、まだ」  17作目のオリジナルアルバム『ひみつスタジオ』。  ファンクラブ会員である母と私は当然、FC限定盤を購入した。  旅行の少し前に届いたのだが、まだ聴けてない。 「せっかくなら、今日聴こうかと思って」  この後、全国ツアーも控えている。私は、ライブ前に予習しておく派だ。 「聴く!」  母もまだだったらしい。  自宅から歩いて15分ほど。  カーシェアの駐車場に向かい、車を持ってきた。  家で待機していた母を拾い、祖母へ電話をした。  そのまま車を走らせること、2、3分。  集合住宅の裏道に入ると、小さい人影が見えた。 「あ、いるよ!」  後部座席の母が言った。 「おはよう!」 「おはよう!」  小さいリュックと、ウエストポーチのみの身軽な祖母である。 「荷物、それだけ?」 「だって着替えだけでしょ」 「ま、そうだけど」 「はい、菜名ちゃんこれ」  祖母がおもむろに、ビニール袋を渡した。  中には、コーヒーと黒糖バターロールが入っている。  コーヒーはありがたいが、バターロールは一体どのタイミングで食べたらいいのだろうか。これから運転するし、向こうに着いたらお昼を食べるつもりなのだが。  ま、これは帰ってきてからでもいいか。  賞味期限ギリギリだけど。
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