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夜勤を乗り越えた母は、後部座席でひっくり返っている。
私がETCカードを持っていないので、現金支払いを母に手伝ってもらうことになっていた。
料金所に近付く度に、後ろに手を伸ばして、チョイチョイと起こす。
その度に『ぬわっ』とか妙な声を上げて起きる母であった。
一方の祖母は、寝ることもなく、かと言って喋ることもなく、静かに窓の外を眺めている。
後ろが静かなこともあって、私は音楽と運転(順番については触れないでおこう)に集中できた。
八王子JCTで、圏央道に乗り換える。交通量は、中央道と同じくらいか、少し多いくらい。
まあ、ここはいつもこんなものだ。
先を急ぐトラックやその他の車たちは、右車線をバンバン走っていく。私はおとなしく、左車線を走る。
やや混んでいるので、正直、車間はそこまで空けられない。つかず離れず、スピードも上げず落とさず、みんなきれいに進んでいく。
渋滞の起こる原因は、主に急な速度低下だと言われる。
前の車がブレーキを踏んだら、当然後ろもブレーキを踏む。それが後ろへ続くと、カクカク進みだし、やがてノロノロになっていく。
そのうちに、どの車が先頭なのか曖昧なままに、全体が詰まっては進み、渋滞になってしまうのだ。
だから今、この圏央道で渋滞を発生させないためには、不要なブレーキはもちろん、無駄な加速も避けなければならないのだ。
カクカクしてしまうから。
何だろう。勝手ながら、ドライバーたちの間に妙な団結感が見える。
先を急ぐからこそ、急な運転はタブーのように思えた。
やるなら、せめて右車線に行けと。
渋滞だけは、何があっても回避するべしという気概を感じる。
こんなことを考えるくらいには、リラックスして走っている私である。
そして、こんなことを考えるのも、もしかしたら創作脳を持つが故なのだろうか、とも思った。
頑張って渋滞を回避した、我々チーム左車線であったが、海老名JCT付近で引っかかった。
いいんだ、ここはそういうところだから。
周りの車から、そう吹き出しが見えた。
私の頭、ヒマなのか。
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