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お参りをし、私の御朱印集めに2人を付き合わせ、売店を覗いては特に何もないねと言い合い、のんびり湖畔まで戻ってきた。
「さて、どうしようか」
時刻は3時を過ぎている。
ここからもう1か所遊びに行くには、正直微妙な時間だ。
「ホテル、行っちゃう?」
我々には最終兵器『温泉でゆっくり過ごす』という切り札がある。
そして、芦ノ湖から湯本へ行こうとすると、意外と時間がかかる。何だかんだ20~30分食うのだ。
「いいんじゃない、行っても」
と母。
「何でもいいよ、任せまーす」
ぶれない祖母。
「じゃあ行こうか。せっかくいい宿取ったし、のんびりしよう」
コンビニに寄って、飲み物や酒類を買う。
くねくね曲がる山道を走って――そう、山道だからスピードが出せなくて時間がかかるのだろう――宿に着いた。
「おおっ」
木々の中にぽっかり現れた和風のお宿は、まさに離れ。
駐車場には、うちの車以外に2台ほど停まっていた。
柱も床も天井も、木で作られたデザイン。こじんまりしたロビーは、静かで落ち着く空間である。
フロントの反対側には、浴衣と大浴場に持っていけるカゴが並んでいる。
女性客は、ここから好きな浴衣を選べるのだという。へえ。
「全然、人いないね」
「一応、予約は今日全部埋まってるはずなんだけど」
チェックインを済ませてから、浴衣を選んだ。
高齢者と中年と妙齢の3人組ゆえ少し気恥ずかしいが、まあせっかくなので一応。
私と母が、どれがいいか悩んでいるうちに、祖母が濃紫の浴衣を素早く見つけて取った。柄も派手でなく、ばあさんでも似合いそうなちょうどいいデザインである。
遅れを取った我々母娘もどうにか選んで、2階の部屋に向かう。
「おおっ」
本日2度目の感嘆。綺麗で広い和室。写真で見るより、ずっといい。
ああいう写真って、大体はよく見せようとするものだ。実物の方がよく感じるって、なかなか珍しいと思う。
祖母は、のんびりと座布団の上で座って休み、母は一服し――そして1番若いはずの私が、マッサージチェアで『うえええ』と変な声を出すなどしていた。
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