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食べ物がなくなれば取りに行き、ジョッキが空になれば注文する。
飲みも食べも無制限とは、怖いものだ。エンドレス。
並ぶ料理の中に、子供へどうぞと銘打ったコーナーがある。
ハンバーグ、エビフライ、オムレツ。これらは全てひと口サイズ。それからチキンライス。
「これいいなあ」
子供の好きな味が好きな母、料理の前でつぶやいた。
「え、いいんじゃない、取って」
「いいの? ほら、お子様ランチは大人ダメですって言うじゃん」
「ダメだったら書いてあるでしょ、てか私も食べる」
ハンバーグとエビフライとオムレツを取った。飲んでいるので、チキンライスはパス。
「まあ、普通に美味しいね」
「このサイズがちょうどいい」
そんな母だから、当然アイスにも飛びつく。
大きなパックから、自分でディッシャーで取るアイス。その隣には、ピノのアソートのように、ひと口サイズのチョコアイスが個包装になっていた。
母は、悲しいくらいに握力がない。どれくらいないかというと、ペットボトルの初めが開けられない。
だから一緒にいる時は、私が母のペットボトルを開けてやる。
ちなみに、1人の時はふたを開けられる器具を使っているらしい。
何でも、ダイソーに売っていたとか。
同じく、握力のなさに困っている方は、1度探してみるとよいと思う。
そんなわけだから、何にせよ私が取るのだろうなと思っていた。
当然のように席を立って、母の手からディッシャーを取り上げる。
素面だけど力がない人か、酔っているけど力がある人か。
うーん、足して2で割りたい。
母に限らず、アイスはみんな好きだ。私も好きだ。
おそらく、ここにいるほとんどの人が好きであるに違いない。
だからだろう、パックの方は早々になくなってしまった。
「アイス、後で食べようと思ってたのになあ」
と私は思った。しかし、ないものは仕方ない。
「はい、食べる?」
母が、ピノタイプの袋を破って差し出した。
「いいの?」
「食べなよ、ほらなくなっちゃうよ」
「母ちゃんが食べまくってるからでは」
「いや、私だけじゃないし」
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