小田原の友人に会いに行く&もちろん箱根も~1日目~→’22.06.17

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 はつ花は、自然薯が売りのお店である。  とろろがけそばはもちろんのこと、全てのそばに自然薯が練りこんであるという。ここに来た客は、何を頼んでも自然薯を口にするというわけだ。  外で順番を待っている間も、何を食べようか考える。  自然と、話題はとろろの話になった。 「とろろが有名なんですねえ」  こんな具合だ。  ところが熊野、ここに来てまたアノ爆弾発言を投下してしまう。 「私、とろろ食べたことないんですよ……」 「え、ないの?」  理由はコイのえさと同じだ。何となくその機会に巡り合わなかった、ただそれだけである。決して嫌いとか敬遠していたわけではない。  では、そば屋でいつも何を食べていたかというと、圧倒的に天ぷらである。天ぷらが好きなのだ。天ぷらの食欲に、とろろという選択肢が自然とかすんでいたのだ。  しかしここまで来ると、コイのえさにせよ、とろろにせよ、ただ私が狭い世界で生きていただけという気がしてくる。そして多分、そうだ。 「とろろかあ……美味しいのかなあ」  気にはなる。気にはなるが、天ぷらそばもありなのではという気持ちもすでにある。 「とろろはね、人によってはかゆくなるんだって」 ここでK子さんが、また大事な情報をくれた。 「アレルギーが出やすい人は気をつけた方がいいかな?」  どちらかというと、私はアレルギー体質だ。花粉症持ちだし、肌は弱いし、ホコリにも弱い。とにかく、身体が敏感な方ではあると思う。 「でも、そば自体にも自然薯は入ってるもんね」  それは確かにそうだ。  むむと考えているうちに、順番を呼ばれた。なんだ、意外と早かった。  おそらく、車の窓から見えたあの瞬間がピークだったのだろう。つくづく、結果オーライな旅になっている。いいぞ、その調子だ。
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