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季節はお盆、8月ど真ん中。
遠く離れたこの小倉も、真夏まっ盛りである。
ゆえに、暑い。
立っているだけでも暑い。当然、歩けばもっと暑い。
さらに、新幹線の車内に長らくいたせいで、副交感神経が少しおかしくなっている気もする。
汗っかきの私は、いつにも増して大汗をかいていた。
タオルハンカチが、すっかりキャパオーバーしている。
M子さんは周りの店を紹介しながら、私は1人で暑い暑いと言いながら、商店街のアーケードを歩いて行く。
ホテルは、駅から5分くらいのところにあった。
途中、私が商店街の通りを勘違いして進みそうになったところを、M子さんに引き留めてもらいつつ、到着した。
私1人だったら、間違った道を端っこまで進んでから、ようやく気が付いたに違いない。
ホテルの玄関を入ると、正面がフロント、右手には食堂があった。朝食はここで取るのだろう。
M子さんには食堂で待っていてもらうことにして、私はチェックインをした。
汗っかきあるある。立ち止まった瞬間、さらに湧き出てくる。
この時の私も例にもれず。ハンカチが追い付かないし、ホテルのスタッフさんの話を聞くのに、あまりゴシゴシパタパタするわけにもいかない。
顔の上を、背中を、滝のように汗が流れていく。さながらサウナに入った人のようになっていたと思われる。
爽やかに説明をするスタッフさんとの対比が、また悲しかった。
チェックインを済ませたら、いったん荷物を部屋まで持って行く。
ここの部屋の鍵は、テンキーであった。
チェックイン時にもらった紙に、暗証番号が書いてある。
これはありがたい。オートロックだと、締め出し事件の恐れがあるが、これなら私でも平気だ。
紙を、パスケースにしまう。
あとは、このパスケースをなくしたり、忘れなければ問題ない。
私をよくご存じの方は意外かもしれないが、物をなくしやすい人間でも、ここなら絶対大丈夫、という領域が存在するものだ。
パスケースは、私にとってその領域の1つに当たる。
何せ、ICカードが入っているのだ。そう簡単になくしてはならない。優先順位はかなり高い。
財布、スマホ、パスケース、自宅の鍵。
ここをなくすと、本当に面倒なのだ。
経験者は語る。
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