小田原の友人に会いに行く&もちろん箱根も~1日目~→’22.06.17

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 九頭竜神社にも参拝し、熊野は御朱印をもらい、K子さんは権現からめもちが売り切れていたことにしょんぼりし、元来た道を戻っていく。  例の、流されている疑惑が浮上した、ボートの横を通った。 「……」  ボートは、相変わらず岸から少し離れたところでふよふよ浮いている。 「流されてないね」 「大丈夫そうですね」  ボートの無事を確認した我々は、さらに散歩を進める。 「あ、クローバー。四葉あるかな?」 「四葉のクローバーって私、見つけられたことないんですよね」  相変わらず狭い世界で生きている熊野である。 「意外とね、探すとあるんだよ」  そうなのか……一体私はどこを見ながら生きてきたんだろう。  あったら面白そうだと、大人2人腰をかがめて草をかきわけてみる。 「人に踏まれやすいところとか、そういう環境の厳しいところによくいるの」 とK子さんは言う。 「四葉ってつまり、突然変異ってことでしょ? 環境が厳しいと、それに耐えようとして突然ポッと変わったりするわけ」 「そうか、のうのうとしているクローバーは、変わる必要もないですもんね」  のうのうとしているクローバーとは一体。  結局クローバーは見つけられず、若干痛む腰をさすりながら散歩を続けた(ただしK子さんは全くもって平気そうであった)。  ぽつりぽつりと店が並んでいる。お土産屋、軽食屋、営業しているところしていないところ。  それらを見ては、こちらもぽつりぽつりと会話をする。 「お茶と虫押え……虫?」  店前の張り紙を読んでみる。虫とは腹の虫のことであった。つまり、軽食屋だ。  残念ながら、店は閉まっている。開いていたら、どんなものか少し覗いてみたかったけど。 「なるほど!」 「そういうことね!」 「私なんか、水虫とかそういう治療をするところだと思いました」 「私もそんな感じかと思った」  かと思えば、特に箱根とは関係ない雑談、お互いの話。  なんだろう、この感じ。既視感がある。  あ、旅番組だこれ。  でもこれがいい。この緩い感じが、いい。
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