熊野の熊野による、熊野のための熊野詣~24.02.23~

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 こんな日に限って、前日が職場での飲みである。  私が以前関わった仕事のリーダーが、社内にて賞をもらったのだ。その賞金を使って、業務に関わった人たちで高級焼肉を食べましょう、というのである。  付き合いの飲みは断りたくて仕方ないことで有名な私だが、タダで高級焼肉が食べられるというなら、話は別である。  最も高い、1人8000円の黒毛和牛コースを食し、飲み放題にかこつけてハイボールとレモンサワーを粛々と流し込み、23時過ぎに帰宅した。 「……」  翌朝。起きると、やや胃が重い。若干、眠い。 「私、今から和歌山行くのか」  何だか、変な気分である。  電車を、遅い時間にしておいてよかった。10時名古屋発だったら、おそらく私は5時頃起きて、まだ消化の済んでいない脂身とアルコールに顔をしかめながら家を出ていたに違いない。  しかし、前日が遅かったため、支度を全くしていない。月曜から木曜まで仕事だったのだ。その前に支度しておいた、なんてことはまずない。そんなことができるのなら、夏休みの宿題だって7月に終わらせている。  ボーっとする頭を無理やり起こして、バタバタと支度をした。  不思議なもので、動けば徐々にお出かけモードになって来る。和歌山まで行く実感はないが、とりあえずは東京駅に行かねば。  この連休は、三寒四温の『三寒ど真ん中』といったところであった。金曜と日曜は雨、土曜がかろうじて曇りという天気予報である。 「やっぱり、降ってるなあ」  仕方なく傘をさして、いつものキャリーバッグを引きずり、最寄り駅まで行く。  電車に揺られているうちに、ふと思い出した。 「あ、ガイドブック忘れた」  せっかく買ったのに、ものの見事に置いてきた。  まあ、いいか。あれは当日に見るためよりは、事前準備のための資料として買ったようなものだ。地理感とか、そもそもどういう場所なのか、それが知りたかったのだ。  今はもう、だいたい頭に入っているし、調べたければスマホで調べればよい。  それにしても、旅行すると絶対何か忘れるのね、私。
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