熊野の熊野による、熊野のための熊野詣~24.02.23~

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 目的の1つ、香梅堂での買い物は済ませた。  時刻は17時半。周りが静かなのですっかり遅いように思えるが、そんなことはない。17時半だ。平日ならまだ定時にもなっていない。 「うーん」 と私は考えた。  当初の予定では、このスキマ時間に神倉神社に行こうと思っていた。  だが……。  スマホで、神倉神社の情報を見てみる。  急な石段。 「むむ」  場所によっては、這って登るようなところもあります。 「むむむ」  これ……やめておいた方がいいのでは?  繰り返すが、今回の主な目的は三山を回ることである。  本宮と那智に行った後なら、試してよかったかもしれない。  だが今日、険しい階段を上って、万が一ケガや筋肉痛を起こしてしまっては、悲しい。  そしてもう1つ思ったことがある。  今日の天気だ。  香梅堂を出た現在、雨は止んでいる。しかし、つい1時間ほど前まで降っていたのだ。険しい階段は濡れて、足元が悪くなっている可能性がある。  いや、危なくないか?  曇天に加えて、雲の向こうの陽も沈み始めているのだろう。あたりは徐々に暗くなってきた。  や、危ないよね、これ。  勝手知ったる土地なら、逆に面白いかもなんて突入したかもしれない。しかし、ここは初めての土地だ。  何より、長い移動時間で疲れていた。  これは、行くべきでない気がする。直感と言うのか、後悔しても知らんぞと、もう1人の自分が訴えているのだ。  よしわかった。今日はやめよう。  もしかしたら、神倉神社は行けないかもしれない。そしたら、また熊野に来ればよいのだ。今度は、早起きを頑張って、名古屋に10時着チャレンジをしてみよう。  旅の1日目にして、もう次の予定を考えるとは気が早いが、こう考える方が気は楽になるのだ。行けるかどうかはさておき、気分は前向きになる。
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