熊野の熊野による、熊野のための熊野詣~24.02.23~

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 決まり事ではないが、神社への参拝は朝の方がいいと言われている。  神道特有の『ハレ』と『ケ』という考えから来るものだ。  漢字で書くと、ハレは『晴れ』、ケは『穢』。  日本の神様は、とにかく穢れをよしとしない。  朝が好ましいのは、1日が始まってすぐの、まだ清らかな時空間という考えを持つからだ。  反対に夕方や夜は、良いも悪いも、色んなことがあった後である。大体、古来において夜はあまりいいイメージを持たれない。理由は簡単、暗くて危険だから。逢魔が時、なんて言葉もあるくらいだ。  しかしこの現代においては、この辺りは本人がどう思うかだろう、と私は考えている。  朝が気持ちいいのは間違いないので、伊勢などは早朝に参拝していたものだ。 「……」  夕方に、しかも誰もいない神社に、1人で訪れたのはこれが初めてだ。  時間は過ぎているはずだが、特に門が閉められているわけでもない。  もう少し行けるか、まだ行けるか……と、惹かれるままに進んでいった。  夕方の神社も、これはこれで雰囲気がある。高くそびえ立つ木々が、より一層あたりを暗くしている。赤い灯籠に、ぼんやりと光がともっている。  時折風が吹いて、木がざわざわと音を立てた。  これがフィクションの物語なら、きっと私は神に呼ばれるがまま歩いて行って、そのまま神隠しに会うのだ。  なんてのんきに考えているうちは、実際そんなことは起きない。世の中、そういうものだ。
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