熊野の熊野による、熊野のための熊野詣~24.02.24~

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 同時に、明日になったらもう帰るのか、という寂しさが湧いてきた。  こうなると、非常にタチが悪い。  だって、まだ17時だよ? もう風呂に入って飲んで寝ちゃうの? せっかく来たのに? 休むなら、明日の電車の中でも、家に帰ってからでもできるじゃない。  体は疲れているはずだが、旅行ハイというべきか。いったんホテルに戻り、お土産や荷物を置いた。  休憩を兼ねて、残りのもうで餅をパクパク食べる。  財布やスマホなど、最低限のものだけ持って、再び外に出た。  どのみち、またオークワに行って、今日のつまみを買わなければならないのだ。  もう少し足を伸ばして、散歩したっていいじゃないか。  一応、申し上げておく。この日の私は土手と山を歩き、その歩数はすでに15000を超えている。  ホテルを出て、真っすぐ熊野川に向かう。1日目はそこまで行かず、手前の道を上流および速玉大社方面に歩いたのだ。  通りと川の間には、新宮城跡がある。跡であるから、建物はない。城郭と石垣だけが残っている。きっと散歩をしたり、上から熊野川を見下ろすのにいいのだろう。  ちょっと寄ろうかな……と思って、気付いた。  階段、上るよな。  いくら旅行ハイとは言え、もう上下には動けない。足が棒のようになっているのだ。歩けて、前後か左右だ。せめて、生活における階段か、緩いやつにしてくれ。  お城の階段は、ダメだって。  今回も己の直感に従い、散策はパスした。せめて、明日の電車が早くなければよかったのにな……。  だが、城をパスしたおかげと言うべきか。もし城を訪れていたら、通りに出てすぐに横断歩道を渡っていただろう。きっと、確実に会わなかったと思う。  ふと、歩道沿いの知らないお宅を見やった。玄関前にスペースがある。おそらく、車を停めるためだ。そこに――。
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