熊野の熊野による、熊野のための熊野詣~24.02.24~

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「猫?」  日も傾き、あたりは暗くなりつつある。その中にポツンと、黒とこげ茶の混じったような丸いなにか。 「いや、あれ猫だよな」  身を丸くして、微動だにしない。どっちが前でどっちが後ろかわからない。 「あ、こっち見てるのか」  もう少し近くに寄りたかったが、これ以上進むと住宅侵入になってしまう。  あたりに人がいないのをいいことに、じーっと猫を見つめた。  向こうも、なんぞと言いたげにじっと見ている。 ↓新宮のねこ。何せ近くに寄れないので、拡大に次ぐ拡大。332ad438-db9e-4401-b808-bb4a68fc6bbc  しばらく猫と見合い、ふとここが人の家だと気づき、あわててその場を離れた。  少し歩いて足を止め、振り返ってみる。  猫は丸くなったまま、首と視線だけを動かして、私を見ていた。  猫って、こういうところあるよね。  それが面白くて、2歩進んでは振り返り、一体どこまで猫(の視線)が付いてきてくれるか、遊んでしまう。  和歌山に限らず、猫を見つけると昔からこうだ。傍から見たら、絶対怪しいと思う。いや、猫がいるとわかればみんな納得してくれるだろう。  問題は、周囲の人が猫を見つけなかった場合だ。  そうなってはもう、こちらは何も手がない。まさか相手の記憶に干渉して抹消するわけにもいかない。お手上げだ。  かといって、猫と遊ばないかどうかは、また別の話である。
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