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ヨークベニマルのすぐ先に、また信号を見つけた。ここも交差点、とりあえず右折する。
どこかで転回するか、ぐるりと戻って来るしかないかと思ったが――おっと、ここにも入り口があった。
「やった、入っちゃえ」
駐車場に入れたのはいいが、夕方のピークを前にした時間帯、平日なのにかなり車で埋まっている。
「どこ空いていますか」
初見の駐車場の難しいところは、道がどうなっているのかわからない点である。
空いてない、と探しながら進んでいって、戻れるならよい。だがまれに、そのまま出口に誘導されてしまう場合もある。
特に、立体駐車場はそのパターンだ。
ここは平面だが、その分広い。他にもダイソーやら何やらが併設されていて、目的地のヨークベニマルはもっと奥だ。
勝手知ったる地元民の那須ナンバーは、果敢に奥へ攻めていく。私も地元ならそうするが、ここは栃木だ。おとなしく、手前の空いているスペースに停めた。
てこてこ歩いて、ヨークベニマルに向かう。
カゴとカートを引いて、店内に入った。
まずは、水と酒だ。それから、塩キャベツ。決まっているものから、カゴに入れていった。
それから、つまみにもう1品ほしい。せっかくなので、総菜コーナーも覗いてみた。
「うっ」
さすが大型スーパー。総菜コーナーが充実している。
やるな、ヨークベニマル。
揚げ物から焼きもの、和洋中何でもござれ。この中から選べというのは、ちと酷ではないか。
栃木ゆえなのか、餃子も充実していた。ズラリと並んだ餃子、美味しそうだ。
なんか……もう、ここでよくない?
天性の面倒くさがりが、顔をもたげた。ここで買えば、そのままホテルに行ける。店で買う場合、注文しなければならない。店員さんと話さなければならない。
いやいや待て。
落ち着け、ここは栃木だ。ここでしか食べられない餃子が、そこにあるだろう。
スーパーのお惣菜も気になるが、妥協したらきっと明日の私が泣く。
ヨークベニマルの総菜を食べるなら、初めからその気持ちでいるべきだ。妥協で選ぶのでは、ヨークベニマルにも失礼だ。
大丈夫だ熊野、己を信じろ。数時間後には、買ってよかったと思うはずだ。
気を取り直して、ここではナスとごぼうの味噌和えのみを買った。決して、那須野だからナスを買ったわけではない。
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