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今回のホテルも、温泉つきだ。必要なものとタオルを持って、プラプラ大浴場に向かう。
どれ、ここのお風呂はどんなもんだろう。
髪と身体を洗い、湯船に浸かってみた。おう、そこそこ熱めだな。
それから、辺りを見回して――時計がないことに気が付いた。
これはまずい。
その昔、己の勘に従って長湯をしたら、思い切り湯当たりをしたことがあった。以来、温泉に浸かる時は時間を見るようにしている。
もうちょっと行けるかも、なんて熊野の言うことはあてにならない。あいつを信用したら、えらい目に合う。
そう思って生きてきた私だが、まさか時計がないとは思わなかった。
時間を気にせずごゆっくり、という趣旨だろうか。いやそれにしてもね……こっちは10分なのか20分なのかの判断がしたいのよ。
あれ? もしかして、みんなそこまで浸からない?
とにかく、時計がない以上、頼るは己の判断しかない。扉の向こうに、脱衣所の時計が見えないか試したが、見つからなかった。
ポカポカしてきたら、いったん半身浴に切り替える。火照りが落ち着いたら、また全身を入れる。凝りまくった肩までたっぷり沈めるのもよい。
いつもなら、これを何度か繰り返すが、今回は1往復程度に留めた。
最後の仕上げは、全身と決めている。
首までお湯を堪能させてから、上がった。
結局、何分浸かっていたのはわからなかった。肌感覚だと、5分くらいだろうか。10分はいなかったと思う。
いつもの私にしては、かなり短い。熊野の行水だ。
だが、お湯が熱めだったおかげで、体はホカホカである。何なら、タオルで拭いても後から汗が噴き出してくる。
変な勘で長湯しなくてよかった。
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