那須塩原と、長楽寺と猫~24.04.29

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 今回のホテルも、温泉つきだ。必要なものとタオルを持って、プラプラ大浴場に向かう。  どれ、ここのお風呂はどんなもんだろう。  髪と身体を洗い、湯船に浸かってみた。おう、そこそこ熱めだな。  それから、辺りを見回して――時計がないことに気が付いた。  これはまずい。  その昔、己の勘に従って長湯をしたら、思い切り湯当たりをしたことがあった。以来、温泉に浸かる時は時間を見るようにしている。  もうちょっと行けるかも、なんて熊野の言うことはあてにならない。あいつを信用したら、えらい目に合う。  そう思って生きてきた私だが、まさか時計がないとは思わなかった。  時間を気にせずごゆっくり、という趣旨だろうか。いやそれにしてもね……こっちは10分なのか20分なのかの判断がしたいのよ。  あれ? もしかして、みんなそこまで浸からない?  とにかく、時計がない以上、頼るは己の判断しかない。扉の向こうに、脱衣所の時計が見えないか試したが、見つからなかった。  ポカポカしてきたら、いったん半身浴に切り替える。火照りが落ち着いたら、また全身を入れる。凝りまくった肩までたっぷり沈めるのもよい。  いつもなら、これを何度か繰り返すが、今回は1往復程度に留めた。  最後の仕上げは、全身と決めている。  首までお湯を堪能させてから、上がった。  結局、何分浸かっていたのはわからなかった。肌感覚だと、5分くらいだろうか。10分はいなかったと思う。  いつもの私にしては、かなり短い。熊野の行水だ。  だが、お湯が熱めだったおかげで、体はホカホカである。何なら、タオルで拭いても後から汗が噴き出してくる。  変な勘で長湯しなくてよかった。
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