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ロマンスカーが来た。車両に乗り込み、席を確認して座る。
今頃、K子さんはどうしているのだろう。会える日の候補に今日が入っていなかったということは、何かで忙しくされているのだろう。
ありがとうございました、私は今から東京に帰ります。
大丈夫、大丈夫。また明日から、いつもの生活を送れる。いい旅だったって、また来ますねって、そう言って離れられる。
電車が動く。
背もたれに身を預けて、少しだけ休む。周りの乗客たちも落ち着いた頃を見計らって、私は菜の花の紙袋に手を突っ込んだ。
「ふふふ」
駅のコンビニで買ったカフェオレとともに、どら焼きを食べようと思ったのだ。
焼きモンブランは、テーブルを汚してしまいそうなので、家で食べよう。
↓左がどらやき、右2つが焼きモンブラン。
↓うさぎが飛んでる。
なんとこのどら焼き、あんこの真ん中にバターが挟んであるのだ。ああ、背徳の味。でもこれ、美味しい。
このお菓子、絶対に小説で出そう。
どら焼きに満足した私は、イヤホンを耳に装着した。いつもの音楽タイムである。
やっぱり、移動には音楽が欲しい。流れる景色を見つめながら、あれこれ考えたり考えなかったりしながら過ごすのだ。
いや、まずいのではと思いながらも、手は自然と、昨日車でずっと流れていたスピッツを選ぶ。
切ない気持ち、寂しい気持ち、本当なら避けたい気持ちなのに、あえてそこに触れたくなる時がある。生半可にかするより、正面から受け止めた方が、また前に進める気がするから。
気の済むまで感傷に浸ればいい。悲しいけど、どうせ日常に戻ったらそんな時間もなくなるんだから。
寝るには、少し時間が短い。
しかし、向こうに着いたら、ほとんど座れないと思った方がいいだろう。こうしてでろーんとしていられるのも今のうちだ。
せめて、目を閉じて休もう。
帰ったらやることが山ほどあるのだ。
荷解きをして風呂に入って、駅弁とかまぼこをつまみに酒を飲んで、写真を整理して思い返して――エッセイの準備をしなければいけないから。
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