21人が本棚に入れています
本棚に追加
多少の遅れは出たものの、ほぼ定刻通りに駅に着いた。こちらは、雨は降っていない。重い曇天の空。そして、少し寒かった。しまった、長袖も持ってくるべきだったか。
A奈に連絡を入れて、とりあえずトイレに行っておく。
この先、渋滞に捕まったら、何時間もトイレに行けない可能性が出てくるのだ。せめて、ゲージを0にしておく必要がある。
万全の態勢で、改札外に出た。
A奈とは、駅前のロータリーで待ち合わせている。車はまだ来ていない。
少し待って、1台の軽自動車が滑り込んできた。前に1度、彼女の車に乗せてもらったからわかる、A奈だ。
「おはよう!」
「おはよう!」
「台風来てるね!」
「あははは」
「あははは」
自分で言うのもアレだが、なんとも陽気な2人である。
音楽を繋ぎ、車を出発させた。下道をのんびり走り、高尾ICに向かう。交通量は、思ったほど多くない。
「コーヒー飲む?」
わくわくするあまり買ってきたカフェオレを出す。いいじゃないか、旅行っぽさが出てきたぞ。
圏央道に合流する。車はあまりいない。やはり、早めに行く作戦が功を奏したか。あるいは、台風の影響か。
「いいね、空いているね」
「いいね、いいね」
海老名JCTを通過して、小田原厚木道路に入った。車の数がさらに減る。
並走する東名を見れば、そこそこ車がいた。みんな、あっちに行くんだなあ。
開けた道路。前方の山々がよく見える。
「ねえ、前暗いよ」
「絶対雨雲だよね」
山の上に、ぽっくりと黒い雲が浮かんでいる。空全体も、夜のように暗い。
「山だから、余計天気悪いだろうね」
「私たち、台風に向かってるんだよねえ」
ふいに、フロントガラスにポツっと雨粒が落ちた。
「ん? 雨?」
2人のセリフに答えるように、突然どしゃ降りがガラスをたたいた。
「うわうわうわ」
「見えない見えない」
ワイパー全開。それでも水しぶきが弾けるせいで、視界が白い。
横から外を見上げると、先ほどの雨雲が真上にいた。
「すごいね、あははは」
「やばいって、あははは」
やっぱり大爆笑の我々であった。
最初のコメントを投稿しよう!