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宿に到着すると、雨風はさらに強くなっていた。
「えらいこっちゃ、えらいこっちゃ」
車から宿まで荷物を運ぶだけでも、濡れる。傘をしていても、横から入ってくるのだ。
本日の部屋は、1階の和室。
浴場が目の前という、とてもいいポジションだ。
「少し休んだら、もうお風呂入っちゃおう」
「そうしよう」
意味もなく、テレビをつけてみる。
ホテルについたら、とりあえずテレビをつけて、何の番組がどの局で放送されているのか、もしくはローカル局があるのかないのか見てみる。
旅行あるある。
夕方のニュースが流れていた。
話題に上がっているのは、もちろん台風の話だ。やあ、だいぶ近付いているらしい。
「あ、箱根!」
今まさに、私たちがいる箱根の様子が映っていた。川の濁流の映像、それから湯本駅の様子。タクシー待ちの人たちが列をなしていた。
やはり、みんなホテルに帰るのだ。予約を取った以上、キャンセルもできずに来たけれど、観光どころではないだろう。インタビューに答えている人もいる。
やあ、こんな足元の悪い中でずっとタクシーを待つなんて大変だ。
「箱根、出てたよ」
トイレから戻ってきたA奈にニュースの話をする。
「雨、すごいもんね」
外はますます荒れている。
「あの人たちには申し訳ないけど、私ら車でよかったねえ。A奈、本当ありがとう」
「いやいや、よかったよ。早めに宿に来て正解だったね」
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