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お腹も満たされ、程よく酔って、ふわふわしながら部屋に戻る。
コロナ対策のため、布団は自分で敷くシステム。これがシーツだの、布団カバーだの言いながら、2人で敷いた。
「ふわ、眠い!」
言うなり、A奈が倒れこんだ。
朝早く起きて、悪天候の中ずっと運転してくれたのだ。本人も気付かない間に疲れているに違いない。
A奈は布団でゴロゴロ、私は布団にペタンと座り、何となくテレビを見ていた。
「ごめん、少し寝ていい?」
「どうぞどうぞ」
先ほどビールを飲んだものの、少し物足りない気分の熊野。
「私、酒飲んでていい?」
「どうぞどうぞ」
「つまみも開けていい?」
「どうぞどうぞ」
冷蔵庫を開けて、自分の缶を出す。プリッツを開けて、パリポリ食べる。
テレビでは、『昔の子供たちにはあったけど、今はもうすっかり見なくなった光景』というテーマのバラエティ番組をやっている。
ふむ。
『昔の小学生たちはブルマーを履いていた』
いや、これは私の世代にはなかった。どちらかというと母の世代だ。
『小学生たちは、登下校中も名札をつけていた』
うーん……私の時はどうだっただろうか。
名札があったことは覚えている。確か入学式の時に配られたのだ。クラスカラーの赤に、ひらがなで『くまのなな』と書かれた名札の残像が、脳内にぼんやり残っている。
ただ小学1年時の、給食中の写真を見たときは、付けていなかった。
何でそんな写真が残っているのかはわからない。ちなみに写真の中の熊野(小1)は、おちょぼ口で枝豆を食べていた。
ということは、配られたものの、付けてはいなかったのか。じゃあ、何で配ったのだ。
そうだ、A奈も同じ市の出身だ。何か覚えてるだろうか、と思って覗き込んだら――。
スヤスヤと寝ていた。
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