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「寝汗かいちゃったよ」
「朝風呂にちょうどいいね」
「うん、お風呂入ろう」
この宿のお風呂は、男女が時間で交代する。朝のお風呂は、昨日入った浴場よりも広かった。
「おお、広いや」
しかも、誰もいない。貸し切りである。おもちゃのアヒルもいる。素晴らしい。
シャワーは、全部で3つ。私が真ん中を利用し、A奈が右端に座った。よく見ると、真ん中だけ水栓のタイプが違う。レバーを見れば、一目瞭然だ。
各々、シャワーを出して、汗を流す。ついでに、体も洗った。
隣から、A奈が訴えてきた。
「待って! これ、お湯出すたびに温度調整しなきゃいけないんだけど! しかも上手くいかな――あっつっ!」
私の使っているシャワーは、温度調節のハンドルと湯水を出すハンドルが別々になっている。だから、温度はそのまま、お湯を出したければそちらをひねって、温まるまで待てばいい。
しかし、A奈の方はお湯と水の蛇口のみ。お湯が相当熱いから、水と上手いこと混ぜなければいけないようだ。
昨日から、熱いお湯にやたら縁のあるA奈であった。
「こっち平気だよ、代わる?」
「いや、大丈夫! 出しっぱなしにしておくから」
ひざにシャワーヘッドを乗せて、急いで髪を洗っている。
えっと……お湯、全部私にかかってますけど。
私が洗ったそばから、泡を流し去っていく。何だこれ、いいのかこれ。
まあ、洗った後だからいいのか。
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