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車は芦ノ湖を離れて、仙石原方面へ向かう。
この旅本来の目的である、星の王子さまミュージアムに行くためだ。
湖を背にして県道75号を走ると、右手になだらかな丘が見えてくる。ススキが一面に広がる――仙石原すすき草原だ。
「うわあ、何これすごい!」
この辺りは来たことがないと言う。A奈が歓声を上げた。
人の背丈ほどもある立派なススキ。その中に、1列だけ人が登っているのがわかる。あの1本道が丘を上がる唯一のルートで、みんなそこに殺到しているのだ。
「いいな、あそこ歩きたい」
A奈が興奮気味に提案した。
「今から行けないかな?」
「どうだろう?」
時刻は昼を過ぎている。仙石原を散策して、星の王子さまミュージアムに行って、湯本のルッカの森に行く。これを夕方のうちに――正直、きつそうな気がした。
「ちょっと時間厳しいかな……あれって、先まで行って、また同じ道を戻ってこないといけないのよね。確か」
「あ、そうなの。あれ、行って戻らなきゃいけないんだ」
「そう」
「どこかに続くのかと思ってた」
「続かないのよ」
子供の頃、家族で来た時に少し上った記憶がある。運動不足の両親とインドア派の子供たちで構成された熊野家、確か途中で断念したのだ。
「行くなら、時間作ってしっかり歩いた方がいいかもね」
と私は言った。
「そしたら、今度また来た時の候補にしよう!」
「そうしよう、そうしよう。また来たらいいんだから」
「箱根なんて近いし」
「今日は、星の王子さま行こう! 無理しないようにしよう」
「おーけい」
星の王子さまミュージアムそのものについては、前々章で散々語ったので、今回は割愛する。
しかし、前回と違って人が多い。そりゃそうだ、お盆だもの。
先月はガラガラだった駐車場には、案内係がいて、ここに停めろと指示をする。私が1人で来た時は誰もいなかったから、どこに停めようと自由だったのに。
さて、写真はそれなりに撮っていく。が、いかんせん人が多いのでどうしても映り込んでしまう。
唯一、回避できたのはこれ。
奇跡の1枚と呼んでいいほど、どこかに人が映ってしまうのよ。
![7e1d518d-4f9f-463f-98b0-014109de642b](https://img.estar.jp/public/user_upload/7e1d518d-4f9f-463f-98b0-014109de642b.JPEG?width=800&format=jpg)
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