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箱根で小田原厚木道路に乗ると、車はすぐに小田原を通過する。
その後は、いったんまた山の中に入る。
かと思ったら、すぐに平塚に着く。高速のくせに、高架ではなく地面の上を走っている。横を、一般道が並走していた。
いつも、このあたりに来ると、旅が終わったんだなと思わされる。
後ろを振り返ると、山が見える。
おかしいな、ついさっきまではあそこにいたのに。
行きと同じく、海老名JCで圏央道に乗る。相変わらず、道は複雑だし交通量は多いしで、ごちゃごちゃしている。
そして相変わらず、東名か八王子方面に車が集中している。茅ヶ崎、全然行かないじゃん。
「お、夕日がきれいだよ」
左手――西を見れば、オレンジの太陽が、丹沢の山々に沈もうとしている。
「本当? ――って、私見れないんだけど」
とA奈が言った。まあ、運転してるから。
「よっしゃ、写真撮ろう」
スマホを構えて、画面がぶれないようにしっかり持ち、タイミングをはかる。撮った瞬間に、トラックなんか前を通られたら台無しだ。
「よし、ここ!」
タップしたと同時に、遮音壁が登場した。
「ノー!」
車から撮影あるある。
撮った瞬間に、何か邪魔なもの現れがち。
「思いっきり邪魔された!」
「あるある!」
「まずい、モタモタしてると沈んじゃう」
もう、なりふり構っていられない。再び、壁が切れたこの時がラストチャンスだ。とにかく、撮りまくった。
「何とか、撮れたかな」
「後でちょうだい」
「了解」
光が伸びて、何やら筋斗雲みたいになってしまったが――まあ、いいか。
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