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圏央道は長い。そして、トンネルが多い。
撮影も無事に終わったので、お日さまもお帰り頂いて結構。本日の業務を終了したお日さまがいそいそと引っ込むと、すぐに暗くなった。
「夜になったねえ」
「よし、ちょっと頑張るわ」
そう言うと、A奈は追い越し車線に飛び込んだ。
「少しでも早い方がいいもんね」
「ありがと、でも無理しなくていいのよ」
帰る前、彼女は私の最寄りまで送ると申し出てくれた。
遠くはないが、そうなるとA奈は行って、また戻ってこなくてはならなくなる。
「いいよ、大丈夫だよ。○○(1日目で待ち合わせた駅)で下ろしてくれたら」
だからそう言った。
「それにほら、あっち混むと思うんだ。下手したら、渋滞とか起きるかも」
「じゃあ、電車の方が確実かな?」
「うんうん」
そんなわけで、行きと同じルートで帰る我々である。
城山ダムのそばを通過して、長いトンネルに入った。出口の直前で、高尾山ICの分岐がある。ここで降りて、あとは下道を通って行けばいい。
「A奈、そろそろ左戻った方がいいかも」
「そうね、あそこで降りるんだもんね」
そして、出口の案内は唐突に訪れた。
車はそのまままっすぐ進んだ。
「!?」
「あれ?」
とA奈がつぶやいた。
「通り過ぎちゃった?」
「通り過ぎちゃったね」
言い訳をさせてほしい。トンネル内の分岐は結構わかりづらいのだ。まして、初めて通った道である。私だって、たまたま見つけただけで、自分が運転手だったら上手く抜けられていたかどうか、自信ない。
「ごめん! どうしよう、戻らないとダメかな」
「いや、次の八王子JCTで中央道に乗っちゃおう。で、八王子で降りれば全然大丈夫だよ」
「ならよかった――ごめんね、思いっきり通り過ぎちゃった」
「大丈夫、大丈夫」
「次で、中央道ね」
「そうそう、新宿方面ね」
「おけい」
次を間違えたら、さすがに面倒なことになる。あきる野や青梅は、ちょっと私も土地勘がない。
2人で、あれが分岐だの、次は左にいればいいだの言い合ったおかげ――かはわからないが、車は無事に中央道に乗った。青梅ルートは回避した。
そこから出口はすぐだ。この辺、走ったことないんだよねと言っていたA奈であったが、しばらく走るうちに道がつながったらしい。わかったわかった、と納得していた。
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