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目的地の駅に到着した時には、19時半近くになっていた。
「ごめんね遅くなって!」
「ううん全然! 本当、ずっと運転してくれてありがとう」
「いやいや、楽しかったよ」
「私も楽しかった! 行ってよかったよね」
「うん、行けてよかった!」
私を見送ろうと、A奈も車から降りる。
「菜名、忘れ物ない? スマホちゃんと持った?」
「うん、大丈夫」
自信たっぷりに答える私。
「本当?」
疑ったA奈が、助手席のドアを開けて中を覗いた。
「ちょっと!」
手には、旅行中のBGMに大活躍した、私のウォークマン。
「ティッシュの上に置いてあったよ! 大事なもの忘れてるじゃん!」
「うははは」
「菜名~しっかり~」
「最悪、忘れても取りに行けるしね」
「そうだけどさ~」
再度、忘れ物がないか確認した。私の方でも、確認する(当たり前だ)。
「よし……じゃあ、帰るか」
「そうだね」
「また遊ぼうね」
「遊ぼう」
「旅行もしよう」
「草津も行こう」
「やりたいこと、やらなきゃね」
「箱根も行かなきゃね」
「とりあえず、普通にご飯でもいいし」
「うん、また連絡するよ」
キャリーバッグを、しっかり持ち直した。
「A奈、気をつけて帰ってね!」
「菜名もね! 気をつけて」
お互い、手を振りながら別れた。
そんな会話をして別れたものだから。
また、A奈とどこかへ出かけたり、遊びに行ったり、旅行するものだと、私は勝手に思っていた。
お互いの予定もあるから、はいじゃあ1か月後に、とはいかないまでも。
この先の秋冬、シーズンごとにでも会えたらなと、ぼんやり思っていた。
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