食べるだけの旅、それは終わりのない挑戦

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 なお、N子が前年に友達と行った際は、宇都宮駅近くのドンキホーテ地下にある、『来らっせ』という店を訪ねたという。 「ここすごいんだよ、いろんなお店の餃子が1度に食べられるの」 「へええ」 「1皿に1個ずつ、6店舗の味が乗ってる盛り合わせとか」 「へえええ」  何だ、その夢のような店は。  つまり、市内をさまよわずとも、いっぺんに餃子が食べられるのだ。  手数料とか取られないだろうか、大丈夫だろうか。 「ちなみに、そこ冷凍餃子も売ってるから、お土産も買えるよ」 「買うしかないな」 「私、思ったのよ」  例によって、スマホの向こうから聞こえてくるN子の声。 「餃子は、お酒と一緒がよくない?」 「無論」 「となると、夜に食べるじゃない?」 「はいはい」 「もし、くまちゃんが大丈夫なら、来らっせで冷凍餃子買って、うちに帰って食べるってのはどう? そのまま泊っていっていいし」 「……あんた、天才か」  説明しよう。  N子が住んでいるのは、茨城県日立市。  彼女が栃木に来るとしたら、車だ。常磐道を下り、北関東自動車道を走って、やって来る。  仮に、現地つまりお店で食べたとして。  第一に、GW中の今回、お店に上手く入れるかが問題である。下手したら、どこも入れず待ちに待って、すっかり遅くなることも考えられる。  第二に、N子がお酒を飲めない。当たり前だ、これから運転して帰るのだから。  では、現地でホテルを取るか。繰り返しになるが、GWだ。果たして今から取れるだろうか。 「少なくとも、うちなら宿泊代は浮くよ」  ありがたし。 「や、それが1番いいと思う。さっさと買って、さっさと帰ってきて、のんびり餃子食べようよ」 「OK。じゃあ、いちごの里は、昼?」 「そうだね、ビュッフェ食べるか」 「うわあ、食べ放題の後に餃子」 「頑張るしかない」  決まった。  4月30日、日曜日。この日にいちごとビュッフェと、餃子を食す。
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