食べるだけの旅、それは終わりのない挑戦

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 まずはトイレを済ませ、西口に向かい、N子の車を探す。  ああ、いたいた。見覚えのある、いつもの車。 「おはよう」 「おはよう」  小山は曇り空。蒸し暑くてたまらなかった東京に比べて、ややひんやりしている。一応、上着を持ってきて正解だった。 「雨がさ、場所によって降ったり止んだりなんだよ」  車を走らせながら、N子が言った。 「来る途中も、降ったり降らなかったりで」 「へえ」 「まあでも、この天気のおかげで、人混みも少しはマシになるんじゃないかって思うけど」 「そうね、レジャーってわけにもいかないし。昨日は人多かったかも」 「昨日は天気よかったもんね」  場所により、というN子の発言そのまんまである。少し走れば、ダーッと雨がフロントガラスを叩きつけ、かと思えばシン、と静かになる。  車は、大通りを途中左に曲がり、小さな通りに入った。  周りは田んぼ、時々畑。地方の、典型的な風景である。  これは、車じゃないと来られないなあと思った。  小さな通りを、また左に曲がり小道を進む。 「もう着くよ」 「早いね」  開けた駐車場の先に、ビニールハウスが見える。  今回はパスしたが、確かいちご狩りもできたはずだ。ここでやるのだろう。  レストランを予約した11時まで、まだ30分以上もある。 「お土産でも先に見ようか」 「そうしようか」 「その前に私トイレ行ってきていい?」 「行ってらっしゃい」  N子を見送り、私は先に物販店に入った。トイレはまだいい。だって、20分ほど前に行ったばかりだから。
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