食べるだけの旅、それは終わりのない挑戦

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 餃子を手に入れた我々は、宇都宮を後にした。  今回の旅は、ひたすら食べることが目的だ。観光する予定はない。これから、茨城に帰らなければならないのだ。道が混む前に撤退しよう。  北関東自動車道を、東に走る。驚くほど、車がいない。 「めちゃくちゃ空いてるね」 「行きもこんな感じだったよ」 「あらそう」 「というか、ここの道路が混んでるって聞いたことない」  天気は、相変わらず不安定である。急に雨が降り出したかと思えば、スンと静かになる。山間を走れば、すぐそばまで雲が降りていた。 「あれは霧なのか、雲なのか」 とN子が言う。 「いやあ、雲でしょ。霧だったら、あんなにくっきり見えないんじゃないかしら」  そう答える私だが、雲と霧の違いの定義は知らない。何となく、ノリだけで生きている。  日立に着いた頃には、少し薄暗くなっていた。  N子の実家の近くに、日帰り温泉施設がある。  お風呂はそこで済ませることにした。  ゆっくり湯に浸かりながら、ぼんやり思う。 『今年、温泉に入ったの初めてだな』  そりゃ、身体もカチカチなわけだ。  今後は、もっと積極的に温泉に行こうと誓いつつ、風呂から上がる。  日曜の夕方にしては、あまり混んでいない。ゆっくり入れるし、ロッカーものんびり使える。 「だって地元の人しか来ないもん」  N子いわく、そういうことらしい。  観光地や、都内のスーパー銭湯だったら、人だらけだ。本来だったら、絶対避けたい時間帯である。  あーあ、どうして私は近所に住んでいないんだろう。
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