食べるだけの旅、それは終わりのない挑戦

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 1発目は、めんめん。宇都宮餃子でも、かなり全国的に有名なお店らしい。  まずは、有名店の味から行こうではないか。  さあ、焼こう。 「えっと、」  N子がコンロの前に立って、箱に書いてある作り方を読む。  一応は、彼女の家の台所だ。N子が主体になって作る。私はアシスタントよろしく、隣に立ってそれを見守っていた。 「まずはごま油を敷き――ああ、ごま油ない!」 「あら」 「ちょっと思ったんだよね、買っておいた方がよかったかなって」 「うちにあるから持ってきたのに」  思っても、どうしようもない。私のごま油は、遠く100km以上離れたところにいるのだから。 「まあ、サラダ油でなんとかなるでしょ」 「油だしね」  名店の餃子のポテンシャルに期待しよう。  熱したフライパンに、餃子を並べる。 「うわ、全部いけるかな」 「いけんじゃね?」 「ちょっとこれ動かせば――いける、いける」  餃子を並べたら、水かお湯を餃子が1/3隠れるくらいまで入れる。 「1/3!?」  N子が動揺した声をあげた。 「1/3ってどれくらいよ」 「具体的な数字で言ってほしいねえ、何百mlとか」 「でもそれだと、フライパンの大きさとかで変わっちゃうんじゃない?」 「そうか……」  とりあえず、と何となく目分量で水を入れてみる。 「多いかな」 「いや、どうだろう」 「様子見て、後で足せばいいか」 「そうね」  フライパンにふたをした。
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