食べるだけの旅、それは終わりのない挑戦

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 数分後。 「ちょっと、見てみるか」  N子がふたを開けた。 「うーん、まだ上が生っぽいね」 「でも、下の方はだいぶ水がないよ」 「水、足りなかったかな」  むむ、とN子がうなる。 「でも、今から足しても遅いよね」 「上の方、少し濡らしてみたら」 「どうやって?」 「手を濡らしてさ、上からパッパッて降るの」  N子が騙されたつもりでやってみる。 「ど、どうだろうか……」  2人とも、言葉に出さずとも思っていた。  多分、失敗したなと。 「半分に分けてやればよかったね。いっぺんに焼かなきゃよかった」 「確かに」  おそらく、これ以上手の施しようがない。  生っぽい皮を対処するには、もう1度蒸し焼きにする必要があるだろう。しかし、もうすでに焦げているであろう表面が、リトライに耐えられるとは思えなかった。 「上は、キッチンバサミで切っちゃおう」  N子がハサミをフライパンの中に突っ込んで、ちまちま切っていく。なんて、地味な作業。 「ま、こんなもんかな」 「あとはまあ、食べちゃっても平気でしょ」  これは、私の発言である。  いい加減、早く食べたくなってきた。お腹が空いているかどうかは、関係ない。目の前で、餃子のいい匂いがしているのだ。これは、食べたくなると言うものだ。 「よっ」  N子がお皿を伏せて、フライパンをひっくり返す。 「やっぱ焦げてる」 「まあまあ、羽根の部分でしょ。食べたら美味しいって」  かくして、ようやく食卓に餃子が並んだ。 ↓こちらがめんめんの餃子。よく見ると、皮の端っこが生っぽい。  檸檬堂はN子、クリアアサヒは私。14aaf307-c445-47d8-8932-61ccdbb688fb
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