食べるだけの旅、それは終わりのない挑戦

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「今度はちゃんと水を入れよう」 「んだな」  2皿目は、高橋餃子。N子おすすめである。  前に食べた時、美味しかったというのだ。  それは是非にも食べたい。さあ、焼いておくれ。  N子がフライパンと対峙している間に、私は隣で使った皿などを洗った。いったん、水切り籠に置く。 「ねえ、使っていい布巾どれ?」 「これ」  大皿や菜箸は次の餃子のために使う。だからチマチマ拭いていたのだが。 「くまちゃん、いちいち拭くの。丁寧だねえ」 とN子が言った。 「いや……お皿は次使うじゃん」 「あ、そうか」  大丈夫か、N子。 「お、いい感じ!」  めんめんの失敗が生きたようである。  皿にひっくり返してみれば、一目瞭然。より美味しそうだ。 「くまちゃん、持って行って」 「あいよ」  私がそそくさと持って行く間に、N子がフライパンを洗う。  割と大きなお皿に、びっしり餃子が乗っているのだ。結構、重い。  1皿目もそれなりの緊張感であったが、今は酔っている。  絶対こけたり、手を滑らせてはならない。フラグではない。  とは言え、たかだか台所からリビングまでの距離である。  無事、餃子はテーブルに着地した。  何よりも、間違いなく餃子を食べたいという思いがミッションを成功させたと思われる。  餃子を想う気持ちをなめないでもらいたい。  酔っぱらいだって、やる時はやるのだ。  たかが、テーブルに運んだだけだけど。
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