食べるだけの旅、それは終わりのない挑戦

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 日立市大(みか)にあるアンブロッシェは、夜の居酒屋営業がメインである。  ランチはご飯がなくなり次第、終了。  オープンして満席になったら、もうその日は食べられない。  だから、開店前から並ぶのだ。  なお予約は、3名から。  だから、2名で来ている我々は並ぶのだ。  開店20分前くらいには着いただろうか。  この日はGW期間とは言え、平日であった。にも関わらず、私たちの後ろには続々とお客さんがやって来る。  開店。並んでいた客、それから直後に入ってきた客で、店内はすぐいっぱいになった。 「さて、今日は何を食べようか」  通された席に座り、メニューとにらめっこしながら考える。  事前にN子にお願いして、看板メニューのローストビーフ丼をテイクアウトできるよう、予約しておいた。  もちろん、今晩の酒のお供にするためだ。  であれば、必然的にローストビーフ丼以外のものとなる。  さあ、どうするか。ハンバーグもサーロインステーキも、チキンもどれも美味しそうだ。困った、困った。  これがまた、そう簡単に来られないほど遠いお店だから困る。  どうして私は日立に住んでいないのだろう。 「決めた?」 「決めた!」 「思い切ってサーロインステーキにする!」  お腹が空いていないとか、ガッツリ系は重いかもとか、そんなことを言っている場合ではない。  ソースが、和風とガーリック醤油と、デミみそから選べる。  また難しい要求をしてくるものだ。  とりあえず、今回はオーソドックスに和風としよう。 「じゃあ私はローストビーフ丼にしようかな」  これはN子。  接客を1人で行っている奥さんが来たタイミングで、注文をした。 「今日はなんだか忙しいみたいで」  それは何となくわかる。飲食をやっていた人間なら、特にわかる。  大体、お客が一斉に稼働するとその時点で詰むのだ。  1人、あるいは少ない人数で回す際は、注文や調理、提供などの流れを少しずつずらすのが、お店を上手く回すコツである。
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