食べるだけの旅、それは終わりのない挑戦

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 本日のグルメはまだ続く。  最後に向かうはシュークリームの店……だが、その前に。  茨城県民にはおなじみだと言う、ヨークベニマルへ。  せっかくなら、牛角のやみつきキャベツを買って行こうというわけだ。  広い駐車場を、スーパーや100均や飲食店などのいろんな店舗がぐるりと囲んでいる。郊外では割とよくある形式だ。  そして、ヨークベニマルそのものも広い。 「おお……」  あれもある、これもある。  実家近くにある、八王子市内の某スーパーを思い出していた。  郊外のスーパーって、利便性は低いけど、その分品ぞろえが充実している。  おっと、いけない。本来の目的を忘れるところだった。  やみつきキャベツを見つける。  おお、あった。あった。  1つは、賞味期限間近の値引き商品。全く問題ない。今夜、食べればいい。  もう1つ、買う。こちらは多少日持ちがするので、休み中のどこかで食べよう。 「やった。買えた、買えた」  おつかいに行った子供のように、やみつきキャベツを2つ抱えて、車に戻った。  さあ、次がラストである。  目的地は、日立駅近くの洋菓子店、モルトボーノ。  看板メニューのシュークリームを4つ、N子が予約しておいてくれている。 「取ってくるから、待ってて」  駐車場に車を停めると、N子はそう言い残して出て行った。 「……」  車内には、彼女がかけたBGMが小さく流れている。おそらくは、アニメかゲームか何かのキャラソン。  画面に出てくるアーティスト名が、もれなくキャラクターか声優さんなのだ。間違いない。  複数で、元気に歌う声が聞こえる。ふいに、それがプツっと切れた。 「ん?」  また切れる。そのうちに、切れるどころではなく、えっ、うぇっ、と途切れた声だけが聞こえるようになった。 「Bluetooth切れてんのか!」  N子がスマホを持って店に行ったからだ。車のドア閉めてあんなに離れれば、そりゃ切れるわけだ。
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