食べるだけの旅、それは終わりのない挑戦

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「これは美味しいね」 「でしょ?」  そう言うN子の皿には2つしかない。 「残りは夕飯に食べる」  なるほど、その手があったか。  しかし、私にはその手は使えない。  今、ここで食べて行かなければならない。  N子が、ペルソナ5をプレイしている。  私は全くゲームをしない。  なのに、BGMだけは好きで、動画やら何やらでよく聴く。  創作のお供にピッタリなのだ。  ペルソナもそうで、そもそも何のゲームなのかも知らないくせに、5のテーマ曲などわざわざ買ったほど、お気に入りなのである。  そんな話をしたら、N子がペルソナのプレイ画面を見せてくれたのだ。  クリアは、とっくの昔にしている。だから、もう1度最初から。  私とは対照的に、N子はどっぷりゲームをやる、ゲーマーだ。  目をつぶりながらでも操作できるんじゃないか、と思わせるほどの手つきである。  確か、ペルソナの存在を知ったのが、N子ではなかったか。  大学の頃、ペルソナを作っているアトラスという会社が、キャサリンという新しいゲームを出したので、N子がそれを買ってみた。  みんなでキャサリンを見てみようと、当時1人暮らしをしていたN子の家に集まったのだ。  結局、キャサリン自体はやや難解で、みんなでうーんとうなった記憶がある。  ただ、それがきっかけで私はペルソナを知り、ゲーム――には手を出さず、BGMだけ聴くという、妙な手の出し方をしたのだった。  なんだか、懐かしいな。  ゲームができない分、見るのは好きだ。  シュークリームを頬張りながら、友人がプレイしているのを、ボーっと見る。  ムービーになるたびに、主人公を見てはN子が『顔がよい』とぼやく。  まあ、それはわかる。確かに顔がよい。とてもよい。  何なら、この手で描けるようになりたいとすら思う。  おっと、失礼。私の中のオタクが出てしまった。  ゲームをしつつ(私はしていないが)、美味しいおやつを食べる。  こういうのがいいのよね、こういうのが。
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