7.蠍の恋情 ※

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7.蠍の恋情 ※

 待って、水刃とおれは最初どこで会ったんだっけ? 「大丈夫。痛いことはしない。ねえ、いくら星紋が浮かび上がって危険を知らせても、もう体が痺れているでしょう?」  体からどんどん力が抜けていく。まともに起きていられなくてソファーに背を預けた。覆いかぶさるようにして、水刃が何度もキスをしてくる。 「ど……して、ど、く? 体が熱くて……、動け、ない」 「これは、ごくごく少量の毒を薄めただけだから、体が少し麻痺するだけだよ。ごめんね、火未。火と水の力が強すぎると、どうしてもお互いに干渉しあうから」  水刃の言葉はとても優しい。そして指の動きはもっとずっと優しかった。水刃の唇が瞼に触れ、左頬に触れる。チリチリと炙られるように右頬が熱い。これも少しずつおさまっていくんだろうか。  唇の間から再び水刃の舌が入ってきて、口の中をゆっくりと舐っていく。互いの唾液を飲み込むたびに少しずつ体の感覚がおかしくなる。触れられた部分が快感だけを拾い上げた。  美しい指がボタンを外し、シャツを脱がす。一つ一つの動作がとても綺麗だと思った。おれの服を全て丁寧に脱がせた後、水刃は手早く自分の服を脱いだ。見事な筋肉がついた体が現れて目を離せない。目の前の光景に震えて逃げ出したい自分と、水刃に触れて何もかもを確かめたい自分が入り混じる。 「火未、嫌じゃない? ぼくのこと、怖くない?」 「いやじゃ、ない。あ、あの」  水刃が、おれの手を取って、指に口づけた。柔らかい唇の感触にどきどきして、下半身の奥が疼く。 「……もっと触っても、いい?」 「えっ? あ、あの。みず、は」  おれは、口づけられているのとは反対の手で水刃の頬に触れる。冷やりとした肌に潤んだ瞳が自分を見ている。瞳の奥に揺らめく欲に震えながら言った。 「おれは、水刃みたいに、きれい、じゃ、ないけど」  水刃がいいのなら嬉しい。ずっとずっと、好きだったから。  ――水刃の瞳が真紅に染まった。
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