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(うう……会いたいよ、イズー……)
恋がこんなにも苦しいものだなんて知らなかった。
一緒にいる時は、あんなにも楽しいのに。
ちょっと離れただけで、こんなにも寂しく切なくなる。
窓の外を見て。
冷たいガラスに手を当てる。
結露がぽたりと手を伝って流れて。
慌てて私は手を引っ込めた。
「冷たい」
そんなのあたりまえ、だよね。
そんなことを考えていたら。
「――ヒヨリさんっ!」
と、懐かしい声が急に部屋に響き渡った。
「イズー?!」
くるりと振り向けば、愛おしい彼の姿。
スーツ姿で、部屋のドアの前にすっと立っている。
私は――思いっきり彼に飛びついた。
「イズー! 会いたかった!」
「ヒヨリさん。僕も会いたかったです!」
ぎゅっと抱きしめられる感触。
温かな体温。
日向の太陽の匂い。
まぎれもなく、これはイズーの匂いだった。
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