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「ごめんね、ごめんね、リリー。泣いちゃいけないのに……。泣いたら、リリーが心配して天国へ行けないのにっ……!」
「――悲しい時は、泣けばいい」
(えっ……?)
声がして。
驚いて。
急いで涙を拭って後ろを振り向けば、一人の見知らぬ青年が霊園の入り口に静かに立っていた。
淡いブルーグレイの瞳をした、短髪の黒髪の青年。年は、十八歳くらいに見える。外国の人だろうか?
その青年はスーツ姿で汗一つかかずに、じっと私を見つめていた。
(このペット霊園の関係者……なのかな?)
ちょっと深呼吸をして。
「あなたは、誰?」
と、私は彼に向かって話しかけた。
すると青年は私の言葉に瞳を丸くして驚いたように声を発した。
「私が――見えるのですか?」
「……えっ?」
「驚いた。人間には見えないはずなのに――」
そう言って、彼は神妙な面持ちで、とことこと私に近づいてくる。
「こんにちは、僕はイズー。神様の執事です。ちょっと用事でこちらへ来ていたのですが、まさか、あなたのような純粋な人に出会おうとは……」
一気にまくしたてられ、私はぽかんとした。
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