第1話 神様につかえる天界の執事様に一目惚れされまして

2/14
50人が本棚に入れています
本棚に追加
/274ページ
「ごめんね、ごめんね、リリー。泣いちゃいけないのに……。泣いたら、リリーが心配して天国へ行けないのにっ……!」 「――悲しい時は、泣けばいい」 (えっ……?)  声がして。  驚いて。  急いで涙を拭って後ろを振り向けば、一人の見知らぬ青年が霊園の入り口に静かに立っていた。  淡いブルーグレイの瞳をした、短髪の黒髪の青年。年は、十八歳くらいに見える。外国の人だろうか?  その青年はスーツ姿で汗一つかかずに、じっと私を見つめていた。 (このペット霊園の関係者……なのかな?)  ちょっと深呼吸をして。 「あなたは、誰?」  と、私は彼に向かって話しかけた。  すると青年は私の言葉に瞳を丸くして驚いたように声を発した。 「私が――見えるのですか?」 「……えっ?」 「驚いた。人間には見えないはずなのに――」  そう言って、彼は神妙な面持ちで、とことこと私に近づいてくる。 「こんにちは、僕はイズー。神様の執事です。ちょっと用事でこちらへ来ていたのですが、まさか、あなたのような純粋な人に出会おうとは……」  一気にまくしたてられ、私はぽかんとした。
/274ページ

最初のコメントを投稿しよう!