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(――えっ? 執事? 神様? イズ-?)
「感動です! 僕は感動しています!」
そしてイズーと名乗った青年は、おもむろに跪いて私の手を取り、そっと手の甲にキスをしてきた。
「ちょっ?!」
私はびっくりして思わず手を引っこめようとするが、イズーがそれを許さない。
「君、名前は?」
「は? え、ええと……ヒヨリ、です」
「ヒヨリ、かあ。良い名前ですね」
にっこりと。
微笑みながら、彼。
気がつけば驚きで私の涙はぴたりと止まっていた。
「愛犬が亡くなったのですね」
「あ……はい」
やっと手を離されて。
イズーと名乗った青年は、くるりとリリーの眠っている墓石の前にしゃがみこむと手を合わせて何やら呟いた。
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