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「とても――とても大事にされてきたのですね。わかりますリリー。さあ、そろそろ一緒に行きましょう」
そんな言葉を呟きながら。
彼はすっくと立ち上がると、私ににっこりとまた微笑んだ。
つられて私も微笑む。
何だか傍に居ると和む人だった。
「安心してください。リリーは僕が責任を持って天界に連れて帰ります」
また、知らない言葉。
私は再び、ぽかんとした。
「では、そろそろ帰らねばなりませんので……。あ、そうだ、ヒヨリさん。また明日、会えますか?」
「へっ……? え……あ、はい」
「良かった! じゃあ、ここでお待ちしていますね」
そう言って。
彼の姿は、ふっと宙にかき消えた。
(――?!)
夢を見ていたのだろうか?
こんな昼、日中に?
ありえない。
けれど、目の前で起こったことは現実で。
私は――くらり目眩を起こし、その場にばったりと倒れこんだ。
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