004

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「……ここまでが友達と体験した話なんだけど……朝倉さんは、どう思う?」 「そうね~……まだ続きがあるんでしょ?」 「うん……」 校舎3階の一番端っこ。長机といくつかの椅子、あとは使われなくなった学校のガラクタ類が壁沿いに積まれた物置のような一室に(スグル)と、『朝倉』と呼ばれる女子生徒が向き合い、『例の家』に関わる一連の話をしていた。朝倉の隣には細身の男子生徒――胸につけられている名札には『日野』と刻印されている――が黙って座っている。 「とりあえず、山崎くんが体験した一連の話は間違いなく『呪いの家』ってやつが関係しているのは明らかなんだけど、なんかこう、それだけじゃしっくり来ないのよねぇ」 「……そうだね。山崎さんだけが夢の内容を覚えてるって事も妙だし、アルバムの件もあるし……」 朝倉に続いて話しだした日野を見て、卓は内心「この人ちゃんと喋れるのか」ととても失礼な事を考えた。ここに至るまでの体験を話している間、朝倉は逐一「うんうん」「それは怖いねぇ」などと合いの手を入れてくれていたが、隣に座る日野は俯くばかりで一言も発することがなかった。てっきりこういった話には無関心で、ただ朝倉に付き合って同席しているだけだと思っていたのだが、どうやら違うらしい。――そういった卓の驚きのような気持ちを察したのか、日野は伸びた前髪の隙間から卓を見やってから、フッと鼻で笑うような息を吐いた。 「で、そういう体験は例の4人……優斗くんと、鈴木くんと、田中くんだっけ。彼らと揃っている時じゃないと起きないって感じ?」 「たぶん、そうです。そもそも、もう『呪いの家』にみんな関わるのをやめたっていうのもあるとは思いますが……彼らも変な夢はもう見てないみたいで」 「でも山崎くんは違う」 「はい」 卓は落ち込んだ様子で何やら鞄を漁ると、何枚かの写真を机の上に並べた。 「これはスマホで撮った写真を印刷したものです。別に印刷しなくても良かったんですけど、朝倉さんに見せるなら印刷した方がまとめて見やすいかな、って……」 「わざわざ有難う。どれどれ」 朝倉が写真を手に取り、1枚1枚丁寧に鑑賞する。日野は朝倉の邪魔にならない程度の距離から、写真を覗き込んでいた。朝倉は全てを見終えてから、「なるほど」と何度も頷いた。 「映ってるね」 「そうなんです」 写真自体は至って普通の構図だった。卓と友人が映っている写真、家族との写真、遊びに行った先で撮った写真……どれも一見するとなんて事のない日常的な写真だが、そのどれにも必ず『同じ姿の女性』が写り込んでいた。 「この女性さ。山崎くんが見た夢の中の女性とどれくらい似てる?」 「似てるってもんじゃないです。そのまんまです」 忘れるはずがない。洋風な家には似合わない特徴的な和服と、挨拶するかのように下げられた頭。そこまで姿が分かるのに、何故だか認識できない首から上の状態……写真に写る女性はまさに『呪いの家』で邂逅したアレそのままだった。 朝倉は卓の返事を受けて、まるで感動したかのような声色で「すごいねぇ!」と両手をバンザイの形に挙げた。 「さすがに和服の柄までは分かんないけど、山崎くんの言う通りの立ち姿だねぇ!」 「あの、朝倉さんの目には首から上って……」 「見えないよ。なんかモヤってる感じ?でも女性だとか、なんとなく頭に何かつけてるとか、分かるよねぇ。ほんと不思議。山崎くん、すごいねぇ!」 「なんもすごくないですけど……」 写真を出してから、朝倉のテンションがあからさまに上がった。その態度が卓からすると、自分の悩みを面白がっているように感じて少々不愉快に思った。
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