第六話 ご主人様はメンヘラ男子か

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第六話 ご主人様はメンヘラ男子か

「あー、目が回りそうです……」  はしたないことでございますが慣れないワインを口にして酔っ払ってしまい、ベッドでダウンしております。そして両隣には子猿のジョニーを抱いたウラリーとアンナが一緒に寝ているのです。 「むにゅむにゅ」  うふふ。可愛い子供たちですね。けれども初夜に別邸で侍女と子猿に囲まれ就寝するとは想像もしてませんでしたよ。  まだ幼い孤児か。  なんでもご主人様が設立した孤児院の子供は十歳になると、お城かお屋敷で働いてるとのこと。本邸にも侍女や下働きの男の子が多くいるそうです。  時期早々かと思いますが早く手に職をつけるべし。との方針で、実際アンナの様に料理の才能を発揮する子供がいるのも事実です。  ……ご主人様。いえ『辺境の君』よ。  貴方は名高い君主と呼ばれてるけど本当はメンヘラ男子ですよね。女性に怯え猿に怯えカエルに怯え。その弱さを隠すために冷酷無比な振る舞いをなさっていると思います。(勝手な想像です)  けれども大丈夫。わたくしの『安息玉』でお支え致しますので。あ、ですが乱用はいけませんよ。  ええっと、酔ってるのに興奮して眠れません。環境の変化もありますが別に理由が二つございまして。  一つは男色疑惑を払拭するエピソードを聞いたのです。カトリーヌの話では本邸で働いてる頃、ご主人様のベッドメーキングを担当していたそうです。几帳面な御方でいつもベットが乱れることもなく綺麗にご使用なさっておられたとか。  勿論、枕も一つ。これは共にお過ごしになる男妾がいない証拠でございます。  そして二つ目…… 「あ、奥様。思い出しました。書庫です。書庫にご主人様の肖像画がございます」 「ほんと? 是非とも拝したいわ」 「かしこまりました。侍女長の許可が必要ですが大丈夫と思います。明日行かれますか?」 「ええ!」  ……そうなのです。肖像画とは言え、明日ご主人様のご尊顔を拝見できるのです。  なので、なので、楽しみで……ぐう。  ☀︎☀︎☀︎ 「奥様、おはようございます。です」  いつの間にか朝でした。子供たちは働いております。何と情けないことでしょう。もうお酒は飲まない様に致します。はい。 「お水を召されますか?」  ウラリーがニコニコしながら素敵なグラスに入ったお水を差し出してきます。実は喉がカラカラだったのでわたくしは一気に喉を潤しました。 「ありがとう、ウラリー。美味しいですわ」 「あい」  何と気が利く可愛らしい侍女なのでしょうか。その気遣いに感動し思わずベッド越しから彼女を抱きしめてしまいました。 「お、奥様? いかがされました、ですか?」 「ねぇウラリー、毎日一緒にオネンネしよっか」 「えっ……。わ、わぁー、嬉しいです。あいっ!」  彼女がぴょんぴょん飛び跳ね、喜びを爆発させております。その時、カトリーヌがベッドルームへ入って来ました。 「失礼致します。奥様、書庫の利用許可が下りました。午前中はいつでも良いそうです」  おお、吉報ですね。 「うん、では早速。いえお腹が空きましたね。皆で朝食を済ませてから参りましょう!」  さぁ、どんなご尊顔なのでしょうか。
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