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「約束、思い出した?」
「うん」
「じゃあ、ずっと一緒に遊ぼうね」
女の子が手を差し出す。
僕は寂しかった。
社会人になり、実家も出て、忙しさのあまり両親とも連絡を取らなくなり、職場の人間関係も上手く行かず、いつも一人だった。
祭りに行くのも、賑やかで安心できる場所がそこしか無かったから。
「うん。遊ぼう」
でも、この子といれば寂しくない。
小さい頃のように、両親の元へ変える必要もない。
ずっと楽しく過ごせるのだ。
「嬉しい!」
女の子が満面の笑みを浮かべてくれた。
僕を心の底から受け入れてくれている。そう強く思わせてくれる表情だ。
女の子の手を握る。いつの間にか、僕の身長は小さい頃に戻っていた。
「うん!」
「行こう!」
強く握り返され、僕は引っ張られながら神社の境内へ駆けた。
後ろを振り返る。
僕がかつていた場所が遠くなっていく。
もう戻れないと理解した。
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