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「あ」
女の子がいた。
夢の中に出てきた子にそっくり……いや、違う。本人だ。見た瞬間、理解した。
「久しぶり。やっと来てくれたね」
嬉しそうな笑顔だ。夢の中の寂しい表情とは打って変わって。
その子を見て、僕は思い出した。
小さい頃。祭りではぐれた僕はこの神社に迷い込み、女の子と遊んだ。
とても楽しかった。
「ずっとここにいてよ」
女の子はそう言い、手を握った。
「僕もここにいたいけど、お父さんとお母さんのところへ帰らないと」
女の子は寂しそうな顔をした。
「その二人がそんなに大事?」
「うん。きっと心配してる」
「じゃあ、大人になって心配してくれる人もいなくなったら、私とずっといてくれる?」
とても悲しそうな顔。今にも泣きそうだ。
「分かった。約束するよ」
いたたまれなくなった僕は、思わずそう言ったのだ。
子どもの頃の、無知ゆえに軽々しくしてしまった約束。
女の子はそれを果たそうと、ずっと僕を呼んでいたのだ。
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