空っぽな僕を、君で満たして ※

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 入学してからの、最初の2週間。  僕と彼の関係は、ほとんど会話を交わす事すらない、ただのクラスメイトだったはずなのだ。  なのになんでこんな、爛れたになったかというと。  さらにそれから、およそ2週間が過ぎた頃。  ……彼が副担任の若い女性教諭と、理科室でキスをしているところを偶然目にしてしまったせいだ。  あれはよく晴れた、ある朝の事。  僕は園芸部員の仕事のため、やはり今日と同じように、授業が始まるよりもかなり早い時間に登校していた。  教員はもう何人か来てはいるものの、こんな時間に学内にいる生徒は僕ひとりだけだと思っていた。  いつものようにじょうろに水を汲み、花壇の花々に向かい撒く。  だけどそこで、理科室のカーテンが風に揺れて。  ……その隙間から、先生とキスをする田橋くんの姿が見えた。  先生は僕に対して背を向けていたけれど、ちょうど彼はこちらを向いていた。  だからそのまま、目があった。  僕は突然の事に本当に驚き、目をそらす事すら出来ないまま、ただその様子を見ていた。  なのに彼はそのまま僕に見せ付けるみたいに、先生と舌と舌を絡め合う激しいキスを続けた。  しばらくすると先生が理科室を出ていって、残された田橋くんはカーテンを大きく開き、ニヤリと笑ってふざけた口調で言った。 「いつまで、見てんの?田崎の、えっちぃ♡」  そのまま彼はひらりと窓枠を飛び越えて、理科室の外に。  びっくりし過ぎて尻餅をつき、まだ動けないでいる僕の顎先に指を添えて、田橋くんはニッと妖艶に微笑んだ。  そして唖然とする僕の顔を無理矢理上げさせて、やや乱暴に、唇を貪った。  何をされたのか、最初は本気で分からなかった。  しかし理解した後も腰は砕け、頭も惚け切ったような状態のままだったから、されるがままそのキスを受け入れ続けるしかなかった。
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